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» 2020年02月04日 22時24分 公開

ドコモとメルカリが提携する狙いとは? 背後に「ヤフーとLINE」「KDDIとローソン」の脅威

NTTドコモ、メルカリ、メルペイが業務提携を正式発表。5月に会員サービス「dアカウント」「メルカリID」を連携させ、以降はキャッシュレス決済とポイントサービスの分野で協業する。その狙いと背景とは?

[濱口翔太郎,ITmedia]

 NTTドコモ、メルカリ、メルペイが業務提携を正式発表した。各社は5月に会員サービス「dアカウント」「メルカリID」を連携させる予定で、以降はフリマアプリ「メルカリ」で買い物をしたユーザーに「dポイント」を付与するなど、利用者数の拡大に向けて協力する。今夏には、スマートフォン決済サービス「メルペイ」で決済した顧客へのdポイント付与も始める。メルペイと「d払い」の電子マネー/ポイント残高を連携させ、加盟店の共通化を進めるなど、決済事業の強化にも取り組む。

 両社は以前から協力関係にあり、シニア層などの初心者にメルカリの使い方をレクチャーする「メルカリ教室」や、出品物の梱包・発送をサポートするコーナー「つつメルすぽっと」を一部のドコモショップで展開してきた。これらの取り組みを通じてシナジーが得られるとの手応えを得たため、本格的な提携に向けた協議を始めたという。

photo メルカリの山田進太郎社長(=左)、NTTドコモの吉澤和弘社長(=右)

狙いは顧客基盤の拡大と金融事業の強化

 ドコモとメルカリのサービスを比較すると、ドコモは全世代をカバーしつつもシニア層を多く抱えている。一方のメルカリは若年層からの支持は根強いが、シニア層の獲得を課題としている。両社の顧客基盤を統合することで、ドコモはさらなる若年層の強化、メルカリは弱点だったシニア層の獲得を図る狙いがある。

 金融事業においては、d払いの加盟店は実店舗が多く、メルペイはECサイトの獲得に力を入れてきた。今回の連携によってオフライン/オンラインの両方で幅広く利用できる体制を整え、ユーザーの利便性をさらに高める目的もある。

 メルカリは現在、メルペイ事業への投資がかさみ、連結決算の赤字が続いている。提携によってドコモと加盟店を共通化することで、加盟店開拓に要していた営業コストの削減効果も見込んでいるとみられる。

 また、メルペイは1月末に、「Origami Pay」提供元のOrigamiを買収した。Origamiは信金中央金庫と資本・業務提携を結び、地方の信用金庫の取引先である中小事業者を加盟店に抱えている。ドコモにとっては、メルペイとの提携によって、d払いを中小事業者に広められる点が大きなメリットとなる。

 3社はd払いとメルペイを統合せず、両ブランドを継続する方針だが、QRコードの規格統一は視野に入れているという。また、現時点では加盟店手数料など細かな規約の差異があるため、パートナー企業の混乱を避けるべく、共通化に向けて検討を進めるとしている。

 新規事業の開始も検討中で、3社が保有するデータを連携させ、金融関連サービスの開発やマーケティングなどに生かす計画だ。詳細は未定だが、ドコモが持つスマホユーザーの購買履歴などの豊富なデータと、メルカリが持つリユース市場における二次流通データを組み合わせ、独自の価値を打ち出すとしている。新規事業の創出による収益基盤の強化も、連携の狙いの一つといえるだろう。

photo 3社が提携によって実施する取り組み

「ヤフーとLINE」「KDDIとローソン」への対抗も狙い

 ドコモ、メルペイ、メルカリのサービス規模をみると、dポイントの会員数は7345万人、年間利用総額は約2000億ポイント、d払いのユーザー数は2200万人(2020年1月時点)。メルカリの月間アクティブユーザー数は1450万人(19年11月時点)、年間流通総額は4902億円(19年6月期終了時点)、メルペイのユーザー数は600万人(20年1月時点)となっている。

 これらを統合して競争力を高め、Zホールディングス(HD)とLINEの経営統合に伴う将来的な「PayPay」「LINE Pay」の連携や、KDDIとローソン、「Ponta」を手掛けるロイヤリティ マーケティングの資本・業務提携に基づく「au PAY」と「Pontaポイント」の連携に備える狙いもあるとみられる。

 メルカリの野辺一也執行役員は2月4日の会見で、交渉の背景について「(連携に向けた)交渉自体はそれ以前から進んでいたが、ZHDとLINEの経営統合の影響を全く受けていないと言ったらうそになる。合意に向けた話し合いが進んだのはここ1〜2カ月だ」と説明した。

 PayPayの累計ユーザー数は2300万人超(20年1月時点)、LINE Payの国内登録ユーザー数は3690万人(19年9月時点)に上る。au PAYとPontaを合わせた会員数は1億人以上(19年12月時点)と見込まれている。単純比較はできないが、競合も強固な顧客基盤を築いており、ドコモとメルカリにとって厳しい戦いとなることが予想される。

 この点について、メルカリの山田進太郎社長は「ドコモとの提携によって、国内最大規模のアクティブユーザーを持つアライアンスが実現する。日本中のあらゆる店舗でメルペイ・d払いが使える世界を目指す」と話し、競争力への自信をうかがわせた。

 ドコモの吉澤和弘社長も「これほどの規模のEC事業者との連携は初めてだ。アカウント、ポイント、ペイメントを連携することで、顧客がどのサービスから入って来ても便利に使っていただける」と手応えを示した。

 現時点では正式決定はしていないが、3社がこれから資本提携を検討する可能性もあるという。

携帯キャリア3社が分野を変えて競合

 ZHDとLINEの経営統合が発表されて以降、キャッシュレス決済とポイントサービスの領域では統合・再編が進んでいる。当初は、新規参入が相次いで「○○Pay」が乱立していたが、結局はソフトバンク、KDDI、NTTドコモの携帯キャリア3社が分野を変えて競い合う形に落ち着きそうだ。

 携帯キャリア事業の正式サービス開始を控える楽天も、強固なユーザー基盤を持つ「楽天ペイ」「楽天スーパーポイント」を展開している。現時点では、加盟店開拓でKDDIと協力するにとどまり、大手事業者との本格的な連携は発表していないが、大きな動きを見せた場合は勢力図に影響を及ぼすとみられる。楽天を含め、今後も各社の動向を注視したい。

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