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» 2020年02月17日 08時00分 公開

なぜ「VR動画」と「360動画」を分けるべきなのか (1/2)

ホログラムの誤用と同じように、VRも正しくない定義が使われている。なぜそれがいけないのか、西田宗千佳さんが考えた。

[西田宗千佳,ITmedia]

 先日、Twitter上で「360動画をVR動画と呼ぶことには抵抗がある」という話をつぶやいたところ、反対意見も含め、かなりの反響が寄せられた。

 この件については、今も「360動画は360動画と呼ぶべきで、VR動画と単純化すべきでない」と考えている。

 同時に、「AI」という言葉の使い方についても、現状は野放図過ぎるのではないか、と危惧している。

 今回はこれらの点について、あらためて筆者の考えをまとめておきたい。

この記事について

この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2020年2月10日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから

定義がある「360動画」という言葉を使うべき理由

 まず分かりやすい例からいこう。

 筆者は「360動画」を「VR動画」というべきではない、と思っている。その理由はシンプルで、「360動画」という言葉がちゃんと存在しているからだ。英語だと「360 Movie」、日本語だと「360動画」「360度動画」など、表記に揺れはあるものの、ちゃんとそのものズバリを指す言葉がある。だから、それを使った方が誤解はないのではないか、という趣旨だ。

 現在の360動画では、魚眼レンズなどを使って撮影された映像を円柱に巻き付けたような四角い映像へと変換し、それをさらに球に貼り付けて見せる「正距円筒図法」(equirectangular)や、プラネタリウムなどのドーム型シアターで使われることの多い「ドームマスター」、3DCGのマッピングなどに使われる「キューブマップ」などの手法がある。どれも、自分を中心に周囲を見回すような映像になる。

 これは、VRの持つ「その場にいる臨場感」を与える手法として非常に有効かつ撮影コストも低い。極めてバランスのとれた技法だと考えている。なので、「360動画はVRではない」という意図は全く、全く(大事なので2回言った)ない。

 だが一方で、「VR動画」といった場合には、また別の可能性があるとも思う。360動画の持つ「自分が中心になった周囲の映像である」というのは一つの制約である。全てを立体データ化し、その中を自由に動ける映像については「VR動画」ではあるが「360動画」とはいえない。フォトグラメトリーや機械生成など、モデリングを低コスト化する技術が広がっていくと、世界全体を仮想空間の中に構築する「デジタルダブル」的なものも増えていくだろう。

 では、それらが普及した時、360動画とVR動画の使い分けはどうするのだろうか?

 360動画はVR動画の部分集合であり、しかもちゃんと「360動画」という言葉があるのだから、現状から区別して使うべきだ。

 これが筆者の意見である。

 補完的に、一つ情報を提供しておきたい。

 以下の3つは、「Googleトレンド」において、過去12カ月の間「360動画」(360 Movie)と「VR動画」(VR Movie)がどれだけ検索されたかを、日本・米国・全世界で比較したものである。

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photo 上から、日本・米国・全世界で、「360動画」(360 Movie)と「VR動画」(VR Movie)という言葉がどれだけ検索されたかを比較。日本では「VR動画」が突出しているものの、海外ではそうでもないのが分かる

 日本ではVR動画が圧倒的に多いものの、他国では360動画とVR動画がちゃんと同居している。

 この理由は何となく分かっていて、YouTubeがこの種の動画を「VR動画」ではなく「360動画」と呼んでいるからだ。

 海外でも360動画という言葉が市民権を得ている以上、日本でも「まとめてVR動画」という扱いは正しくないのではないか。

 将来のためも考えて、「360動画は360動画と呼ぶべき」と考える理由はここにある。

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