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米軍の教育でもAIが活躍 「アダプティブ・ラーニング」の可能性よくわかる人工知能の基礎知識(3/4 ページ)

» 2020年02月20日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

進路決定やいじめの予測も 学校で役立つAIサービス

 実際の教育現場では、教材の準備、生徒の出欠状況や状態の把握、彼らの学習目標や進路希望の把握など、数多くの対応を教師は求められる。そうした周辺領域でもAIの活用が始まっている。

 例えば前述のアダプティブ・ラーニングは、教材の改善にも役立てられている。最近では、学習者にとって適切な教材を選ぶだけでなく、教材ごとの学習効果を測定する際にもデータ分析が用いられているのだ。

 また顔認識技術で生徒の様子を把握できれば、そのまま出席確認ツールに転用できるだろう。事前に生徒の顔写真をデータベース化しておく必要があるが、これなら構内の防犯カメラを使って比較的簡単に出席確認を自動化できる。

 こちらはインドのAnnex Solutionsが提供している、従業員の勤怠確認サービスのデモだが、社員のデータベースに基づいてリアルタイムで映像内の人物を特定していることが分かる。

 同様のシステムは、さまざまな企業が提供している。スマートフォンでも認識できるようにしたり、音声で個人を特定したりと、多様な研究開発が進められている状況だ。

 進路決定の支援も多くの事例がある。例えばマイナビと三菱総合研究所は共同で、人材領域に特化したAI「HaRi」を開発し、同技術を活用した「納得できる学校研究」というサービスを提供している。

マイナビと三菱総合研究所が共同開発したAI「HaRi」を使ったサービス(公式サイト

 これは高校生を対象としたサービスで、ユーザーが自分に関する情報(性別や学年といった基本的な情報に加えて、進学後に学びたいこと、好きなこと、興味があることなど)を入力すると、それに基づいて推奨度の高い大学の上位10校を表示してくれるというもの。この結果は各大学の情報に加えて、マイナビが独自に持つ進学実績情報や、マイナビユーザーの行動データに基づいて導き出されるという。

 関西学院大学も日本アイ・ビー・エムとAIに関する共同事業を実施しており、18年に就活生からの質問に答えるチャットbotを発表した。この「KGキャリアChatbot」では、同学のキャリアセンターに関する質問から、業界研究や筆記試験対策・面接対策・自己分析の方法、インターンシップに関する情報などさまざまなテーマに対応。これにより進路担当職員の負担が減らせただけでなく、対面での相談をしづらいという学生にもメリットがあったという。

 もう一つ、興味深い取り組みを紹介しておこう。それは、いじめの深刻化を予測するAIの開発だ。

 これは滋賀県の大津市教育委員会が行っている実証実験で、過去に報告されたいじめ事案に関するデータ約9000件を分析し、そこにあるパターンを把握しようというもの。19年10月に中間報告会が開かれ、17〜18年度に発生した事案5212件を分析した結果、「初期段階で加害者に対する指導が行われない」「SNSに悪口が書き込まれている」などの特徴を持ついじめは、深刻化しやすい傾向が見られたという。一定の精度でこうした予測が行われるようになれば、限られたマンパワーでも的確な対応が行えるようになるだろう。

 もちろんいじめ対策は、学習という意味での教育とは異なる領域の問題だ。しかし、義務教育レベルでは、生徒の生活面までケアすることが教育現場の仕事となっているため、こうした領域にもテクノロジーを活用することは大きな意味があるだろう。生徒の性格や生活面を深掘りし、詳しい状況を把握・予測しておくことは、生徒一人一人に合わせた指導を行う上でも役に立つと考えられる。

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