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1200人以上の全社員がリモートワーク GitLabが公開する「リモートワークマニフェスト」は何を教えているか?(2/2 ページ)

» 2020年03月02日 18時20分 公開
[新野淳一ITmedia]
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リモートワークのためのマニフェストやガイドブックを公開

 さらに、リモートワークのためのガイド「GitLab's Guide to Remote Work」、リモートワークのマニフェスト「Remote Manifest」、そして社員マニュアルともいえる「GitLab Handbook」などまで公開されています。

 いちばん簡潔に説明されているRemote Manifestを見てみましょう。

photo 4文字がつぶれないように、横3段組を縦に組み替えました

 内容を訳してみました。

  1. 本社よりも、世界中で採用して世界中で働く
  2. 労働時間を決めるよりも、柔軟な労働時間を
  3. 口頭で説明するよりも、書面にして知識を記録
  4. オンザジョブトレーニング(OJT)よりも、やり方を書面に
  5. 知る必要があるときだけ教えるよりも、情報公開を
  6. ドキュメントをトップダウンで管理するよりも、誰でも編集できるように
  7. 同期的なコミュニケーションよりも、非同期的なコミュニケーションを
  8. 労働時間よりも、仕事の成果を
  9. 非公式なコミュニケーションチャネルよりも、公式なコミュニケーションチャネルを

 もちろん同社が公開している情報は基本的に同社自身がベースになっているため、全てのリモートワークに適用できることではありません。しかし、リモートワークに取り組む組織や個人のための重要な示唆が含まれていると思います。

 次に「GitLab's Guide to Remote Work」を見てみましょう。これはGitLab社員がリモートワークをするに当たって必要な心構えから環境構築、働き方まで、必要と思われる知識を網羅した詳細なドキュメントです。

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 その一部として「Getting Started」の「What not to do」に並んでいる項目を挙げてみます。

Do not replicate the in-office/colocated experience, remotely

Do not transfer all in-person meetings to virtual

Do not assume that everyone has access to an optimal workspace

Do this, not that

Do not assume that remote happens overnight

Do not assume that remote management is drastically different

Don't assume your existing values can remain static

Contribute your lessons

 「リモートでオフィスやコロケーションの体験を再現しようとするな」「一夜にしてリモートで働けるようになると思うな」「リモートのマネジメントは大きく異なるもの、と思うな」「あなたの既存の価値がずっと続くと思うな」など、ちょっとどきっとする項目もありますね。ぜひ詳しい内容まで読んでみてください。

 そして、さらに膨大なドキュメントとして公開されているのが、GitLabの社員マニュアルともいえる「GitLab Handbook」です。

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 こちらには企業のカルチャー、CEOによるKPIやOKRなどの説明。社史、業務の進め方、評価と給料の決め方、部門毎の仕事の進め方など、社員として必要な知識がほぼ全て網羅されています。

 例えば報酬に関する項目「Total Rewards」には、報酬の決め方、評価のされ方、インセンティブ、ストックオプションなどが説明され、さらに「Compensation Calculator」では、自分の役割や役職、居住地(地域の物価が給与にある程度反映されるため)などを入力していくと給与額が計算できるページまであります。

 これだけ会社の仕組みを全てオープンにしているのは、リモートマニフェストの、3)口頭で説明するよりも、書面にして知識を記録、5)知る必要があるときだけ教えるよりも、情報公開を、などがきちんと実現されているからでしょう。

 これらのドキュメントは英語で、しかも量も膨大です。しかし興味があるところだけでも、リモートワークで浮いた通勤時間を利用して読んでみると新たな発見があるのではないでしょうか。

 2017年にGitLab.comが大規模障害を起こしたときも、全ての対応はリモートワークで行われ、その様子も全てYouTubeで公開されました。こうした危機に直面したときの対応にも、同社のカルチャーが色濃くうかがえます。

【参考記事】GitLab.comが操作ミスで本番データベース喪失。5つあったはずのバックアップ手段は役立たず、頼みの綱は6時間前に偶然取ったスナップショット

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