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» 2020年03月06日 07時00分 公開

よくわかる人工知能の基礎知識:勝利の鍵はAI? スポーツとデータ分析の相性が良い理由 (1/4)

スポーツ業界でAIはどのように活用されているのか。選手のパフォーマンス向上やスタジアム経営、メディアでの情報発信など、さまざまな観点で紹介したい。

[小林啓倫,ITmedia]

 AIの具体的な活用法を業界・分野別にまとめる本連載。今回は、スポーツの世界でAIがどう生かされているかを見てみたい。

連載:よくわかる人工知能の基礎知識

いまや毎日のようにAI(人工知能)の話題が飛び交っている。しかし、どれほどの人がAIについて正しく理解し、他人に説明できるほどの知識を持っているだろうか。本連載では「AIとは何か」といった根本的な問いから最新のAI活用事例まで、主にビジネスパーソン向けに“いまさら聞けないAIに関する話”を解説していく。

(編集:村上万純)

スポーツとデータ分析の親和性

 先日、ノムさんこと野村克也氏が亡くなった。テレビ各局で追悼番組が放送されていたが、その中でも盛んに取り上げられていたのが、彼の「ID野球」という考え方だ。IDは「Important Data」を意味する造語で、要はデータを重視してさまざまな戦略を考えることを指す。客観的な事実に基づいて指導や試合を行うスタイルは具体的な成果を生み、ノムさんは監督として平成時代の最多勝記録(1053勝)を持つなど、多くの実績を残している。

 同様にデータ重視で野球チームを運営した人物として、現在米MLBオークランド・アスレチックスの上級副社長を務めるビリー・ビーン氏がいる。ブラッド・ピット氏の主演で映画化された、マイケル・ルイス氏のベストセラー本「マネー・ボール」でビーン氏の存在を知った方も多いだろう。

 彼は野球に関するさまざまなデータを統計学的に分析し、チームの経営や戦略に役立てる手法「セイバーメトリクス」を参考に、弱小球団だったアスレチックスを立て直すことに成功した。

 彼らのように「データに基づいて考える」という姿勢は、現在では野球以外のさまざまなスポーツにも浸透しているが、その理由の一つは、スポーツはデータと親和性が高いという点にある。

 「データを分析することでさまざまなことが分かる」のは決して間違いではないが、現実の世界ではうまく機能しないことが多い。原因と結果に関わる変数が無数に存在するため、その関係性を正しく把握するどころか、変数を計測することすら満足にできないことが普通だからだ。

 しかしスポーツの場合、状況をある程度は単純化できる。「試合に勝利する」あるいは「シーズン優勝を勝ち取る」などのように目標がシンプルで、その目標が達成されたかどうか、なぜ達成できたか、できなかったかも比較的分かりやすいからだ。行動する空間が限定されているため、データ収集も容易だ。こうした理由から、他の分野と比べるとデータ分析がしやすく、それに基づいて結果を出すことに成功するケースも多い。

 これはAIにとっても理想的な環境だ。既に整っているデータ分析環境にAIを組み込むことで、分析結果の精度向上やこれまで実現されていなかった分析・予測を実現できるからだ。そのため多くの企業や関係者が、AIによる「マネー・ボール」の進化に取り組んでいる。

AIが選手のパフォーマンスや相性の良い組み合わせを分析

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