面白い例をいくつか紹介しておこう。まずは電通とAIベンチャーのデータアーティスト、サッカー関連のビッグデータを収集・分析する韓国のTeam Twelveが開発し、2019年12月に発表したシステム「AI11」(AI Eleven)だ。
これはAIがサッカーの試合映像を分析し、勝敗をリアルタイムに予測するというもの。過去の試合データを教師データとして使い、ディープラーニングで分析することで、ボールや選手の動きから勝敗を予測するモデルを構築したという。19年12月10〜18日に韓国で開催されたサッカーの国際試合「EAFF E-1サッカー選手権2019大会」で試験的に実装され、韓国や中国などアジア各国のテレビ中継で展開されたそうだ。
電通は、AI11について「サッカーの新たな観戦体験と楽しみ方を提供」するものと説明している。何が勝敗の決め手になったかまでを分析する方向は目指していないようだが、適切なデータがあればそうしたAIの開発も可能になるだろう。
一方、英サウサンプトン大学の研究者は、スポーツにおいてチームワークが勝敗を左右する重要な要素であるとして、AIで分析することに取り組んでいる。
この研究で使用しているのは、英国のサッカー・プレミアリーグの過去の試合データだ。機械学習を活用して、特定の2人の選手の相性がどれだけ良いかを把握しようと試みている。チーム全体としてチームワークを最適化するために、選手をどう組み合わせるべきかを把握できるようなモデル構築にも取り組んでいるという。
20年2月の米国人工知能学会(AAAI)で発表された内容によれば、分析の結果、マンチェスター・シティFCのキーパーソンの一人がアイメリク・ラポルテ選手だと判明したそうだ。実際に、彼が負傷したことが最近のチームの不調につながっていると研究者らは説明している。
その指摘の正確性については筆者には判断できないが、彼らはこのAIを使うことで、監督に対してチーム構成を改善する提案を行えると主張している。救急医療の現場など、高度なチームワークが求められる現場においても、AIを活用できる可能性があるそうだ。
こうした恩恵を受けられるのは、プロの選手やチームだけではない。
例えば、AIを活用してゴルファーのプレイを支援する「Arccos Caddie」(Arccos社が開発)というサービスがある。ゴルフクラブのグリップエンドに14個のセンサーを装着してプレイすると、スマートフォンアプリで自分のショットの飛距離などの情報を確認できるというものだ。スマホのGPSやマイクなどからも各種データを収集しており、ラウンド中のユーザーの様子を把握。それを解析することで、ラウンドの詳しい記録を自動で付けてくれるだけでなく、コース攻略のアドバイスまでしてくれるという仕組みだ。
他にもより簡易なものとして、個人に向けてジョギングやフィットネスなどの活動を記録・アドバイスしてくれるガジェットやアプリが登場しており、今後もサービスの高度化や範囲の拡大が期待できるだろう。
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