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未来のAIに“意識”は宿るか AI・認知科学の専門家に聞く(3/3 ページ)

» 2020年03月19日 19時00分 公開
[井上輝一ITmedia]
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谷教授 人間の赤ちゃんは、両親から毎日長時間の面倒を見てもらって育つ。つまり、それだけ長い時間、両親(つまり他人)から愛情を受け学習しているのが自他の区別や自由意志の発達に関わっている。しかも、人間の場合はディープラーニングのように一つの物体を100万回も見なくても学習できる。これはある程度生得的な(生まれながらにして持っている)脳構造があるから。

 自由意志にはこのような発達段階が重要と考えている。ではロボットに人間がそれだけの愛情を注げるかというと、私はできないと思う。ただ、ソニーの「aibo」に見られるように、ロボットに長く愛情を注ぐ人も出てきている。そういう人の愛情を受けて発達していけるロボットができたら、もっとすごいことになるのかもしれない。

ソニーの犬型ロボット「aibo」 本物の犬との共生実験では犬がaiboを「生き物」と認識するケースが多かった

鍵は「生命の模倣」か

 2人の専門家に話を聞いて共通していたのは、身体的な生命の特徴を取り入れることが今後のAIの発展に重要ということだ。

 フロース准教授は、AIが自律性を持つためには外界との相互作用が必要で、そのためには生命の体に見られる特徴が重要といい、谷教授はそうした相互作用が意識を生み出すが、人ほどの自由意志を持つには脳の発達段階や人の愛情も重要と話した。

 振り返れば今の第3次AIブームは、現代のコンピュータの計算能力をもって、生物の神経回路網に見立てた「(人工)ニューラルネットワーク」という数理モデルを画像認識にうまく利用できたことに端を発する。

 SF作品が描くようなAIやアンドロイドが現実になるには、脳自体の解明や模倣もさることながら、体や末端神経など生命の構造をさらに模倣することが鍵になりそうだ。

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