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消毒用アルコールと同じ度数の「お酒」続々 新型コロナ対策で

» 2020年04月10日 19時48分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の広がりに伴う消毒用エタノール不足を補うため、高濃度アルコールの製造に乗り出す酒造会社が相次いでいる。3月中旬に65度の「メイリの65%」を発売した明利酒類に続き、4月9日には菊水酒造が77度の「アルコール77」を発売するなど、少なくとも4社が販売に向けて動き出している。

明利酒類「メイリの65%」

 先陣を切って登場したのは、茨城県水戸市にある明利酒類の「メイリの65%」。「より高アルコールで極力不純物のない商品」として開発したスピリッツで、価格は360mlのビン1本あたり1000円(税別、以下同)。同社オンラインショップでは3本以上のセットで販売している。

菊水酒造「アルコール77」

 高知県安芸市の菊水酒造は、醸造アルコールに水とレモン香料を加えた「アルコール77」を発売した。価格は500mlで1本1200円。4月10日に出荷を始めたものの、SNSなどで話題になったためか、同社Webサイトはアクセス集中で閲覧できない状態になっている(10日午後7時現在)。

笹の川酒造「SPIRITS66」

「SPIRITS75」の準備を進めていた笹の川酒造(安積蒸溜所Twitterアカウントより)

 福島県郡山市の笹の川酒造は4月7日、同社の安積蒸溜所が運用するTwitterアカウントを使い、75度のアルコール製品「SPIRITS75」を出荷すると発表した。地元福島県から始め、順次全国へ出荷するという。

 しかし、4月10日になって「消防法等の観点から仕様変更する」と明らかに。飲料用のお酒でも高濃度アルコールの場合は危険物(第四類アルコール類)に該当する場合がある。そこでアルコール度数を75度から66度へと下げ、容器も変え(容量は480mlから500mlへ変更)、商品名も「SPIRITS66」に変更する。「より安全な製造、貯蔵、保管、輸送などの安全強化を重要視し、やむを得ず仕様変更することになった」としている。

笹の川酒造の告知。価格は書いていない

若鶴酒造「砺波野スピリット77%」

 富山県砺波市の若鶴酒造は4月6日、高濃度エタノール製品「砺波野(となみの)スピリット77%」の製造を開始したと発表。4月13日の出荷に向けて準備を進めている。容量300mlで880円。

「砺波野スピリット77%」

 砺波野スピリット77%の原材料は、サトウキビ原料の醸造アルコールと水、グリセリンなど。グリセリンは油脂を加水分解して作られる無色透明の液体で、甘味料や保存料に使われる食品添加物。手指消毒用のアルコールでも保湿剤として使われることがある。

 当初は毎週約1000本を製造する計画で、北陸の医療機関へ優先的に供給する他、若鶴酒造の直営店(とやま地酒本舗蔵の香、若鶴 令和蔵)、ドラッグストアなどでの販売を予定している。売り上げの一部は新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた取り組みに寄付する。

 また、同社が所有するウイスキー蒸留器「ZEMON」(ゼモン)を用いて高濃度アルコールを製造することも検討しており、実現すれば供給量のアップが期待できる。

あくまでもお酒、でも「差し支えなし」

 これらの製品はお酒に分類され、「消毒や除菌を目的に製造されたものではありません」という注意書きが必ずある。しかし同時に、消毒に使う高濃度エタノール製品(65〜80%)としての条件も満たしている。

 消毒用アルコールが不足する中、厚生労働省医政局は3月23日、日本医師会に対して「手指消毒用エタノールの供給が不足していることから、医療機関等において、やむを得ない場合に限り、高濃度エタノール製品を手指消毒用エタノールの代替として用いることは差し支えない」と案内している。

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