新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中で大流行し、3月11日には世界保健機関(WHO)がパンデミック宣言をした。それから1カ月以上が過ぎようとしているが、残念ながら収束の兆しはまだ見えていない。
一方で、濃厚接触を避けるためのテレワークやオンライン授業の推進など、テクノロジーを活用した新たな社会の姿も現れようとしている。こうした世界的な危機の中で新たな仕組みづくりに取り組んだ経験は、私たちにとって必ずプラスになってくれるだろう。
パンデミックに立ち向かう手段として、AIの活用も進んでいる。今回はそうした事例をいくつか見てみよう。
いまや毎日のようにAI(人工知能)の話題が飛び交っている。しかし、どれほどの人がAIについて正しく理解し、他人に説明できるほどの知識を持っているだろうか。本連載では「AIとは何か」といった根本的な問いから最新のAI活用事例まで、主にビジネスパーソン向けに“いまさら聞けないAIに関する話”を解説していく。
(編集:村上万純)
現在の第3次AIブームが起きる前、テクノロジー系で注目を集めていた話題の一つが、ビッグデータだった。膨大なデータを集めて分析することで、通常では得られない知見を得られたり、知見を得るスピードを上げられたりすると期待されたわけだ。
そうしたビッグデータの例としてよく挙げられ、注目を集めたサービスの一つが、「Google Flu Trends」である。ご存じの方も多いだろうが、これはインフルエンザ関連のキーワードの検索数から、インフルエンザの流行を把握するというものだ。インフルエンザに感染して調子が悪くなると、患者たちが症状や薬品名などをキーワードに検索するようになるため、そこからいち早く流行を察知できるという発想である。
その後Google Flu Trendsには、期待されていたほどの精度や速度が得られないことを指摘する声が相次ぎ、世間の興奮も冷めていった。とはいえ多種多様なデータを大量に集め、そこからまだ把握されていない感染症の発生を把握するという発想自体が否定されたわけではない。同様の取り組みはその後も続き、仕組みやアルゴリズムの高度化が進んでいる。
そうした活動の成果の一つが、「HealthMap」というサイトだ。これは米ボストン小児病院の研究者らが開発したもので、ニュースサイトやソーシャルメディアなどオンラインで収集される各種情報、検証済みの各種報告書、専門家の意見といったデータを組み合わせて分析(その一部に機械学習技術が活用されている)することで、さまざまな感染症の発生を監視し、関連情報を発信している。実際にHealthMapは、2014年に、エボラ出血熱の発生が宣言される9日前からその兆候をつかむことに成功している。
今回のパンデミックにおいても、HealthMapは重要な成果を残している。
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