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保健所かたる詐欺メール、病院狙うランサムウェアーー新型コロナ禍に便乗したサイバー攻撃に腹が立って仕方ない話(2/4 ページ)

» 2020年04月23日 07時00分 公開
[高橋睦美ITmedia]

コロナウイルス対策で広がったテレワーク環境を狙う攻撃

 脅威の2つ目は、新型コロナウイルス対策で広がった新しい環境、つまりテレワーク環境のリスクです。以前の記事でも紹介しましたが、自宅でリモートワークする際には、オフィスで仕事をしていた時とは異なるさまざまなリスクが存在します。

 特にいま話題を集めているのは、Web会議サービスの「Zoom」のセキュリティでしょう。「Zoom爆撃」(Zoom-bombing)と呼ばれる荒らし行為の他、脆弱(ぜいじゃく)性や情報のプライバシーに関する問題が指摘されており、開発元は修正対応に力を入れる方針を明らかにしました。

photo ビデオ会議システムとして人気を集めるZoomだが、セキュリティの問題が浮上している

 このZoomのセキュリティを巡る動きは、かつて、ファイル共有などのSaaSが広がり始めた時をほうふつとさせます。ファイル共有サービスなど日々の仕事を便利にするサービスやツールが注目を集め、ユーザーが急増した結果、より多くの目が注がれて脆弱性が明らかになったり、設定の問題を突かれて情報公開につながったりする事件が起きました。成熟度の低いサービスを、個人使用はともかく、業務で利用する場合には、やはり会社としてのリスク評価、ガバナンスが欠かせないことを示したものと思います。

 テレワーク環境で留意すべきポイントはクラウドサービスやWebサービスだけでなく、他にもあります。テレワークゆえに開いておかなければならないオンプレミス環境のサービスや機器が、攻撃のターゲットになる恐れがあるのです。

 例えばNTTデータは、Active Directory Federation Services(ADFS)の活用に攻撃者が目をつけ、フィッシング詐欺に悪用される可能性を指摘しました。

 多くの企業が認証・アクセス制御のためにAvtive Directotyを利用していると思います。ADFSは、それをクラウドサービス利用時のID連携に活用するための機能です。クラウドサービスと連携するため外部に公開するというサービスの性質上、ADFSのログイン画面への接続制限はかけにくいものですが、そこが攻撃者の狙い目になり、画面をコピーされ、IDとパスワード情報を盗み取られる恐れがあると同社は指摘しています

 自宅から社内システムに安全にアクセスするために利用されているVPNゲートウェイ(アプライアンス)も、注意が必要なポイントの1つです。VPNゲートウェイもまた、リモートアクセスの入り口になるという製品の性質上、やはり接続制限を行いにくく、パッチ適用のタイミングを見計らうのも困難なことから、外部からの攻撃にさらされるリスクがあります。

 事実、米Pulse Secureや米Palo Alto Networks、米Fortinetといったセキュリティベンダーが提供する複数のSSL VPN製品については、19年8月に脆弱性が指摘されており、国内でもこれらの脆弱性を悪用した攻撃が観測されてきました。JPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)によると、Pulse Connect Secureについては脆弱性が残ったホスト数は、19年8月の1511件から、20年3月24日時点には298件にまで減少しました。ですが、残念ながらゼロにはなっておらず、ここを足掛かりにしてランサムウェア感染や内部ネットワークへの侵入といった、より深刻な攻撃に悪用されているのです。

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