そして脅威の3つ目は、医療機関を狙うランサムウェアです。ランサムウェアは2〜3年前から世界的に広がった攻撃ですが、特定の組織を狙った標的型ランサムウェアが最近特に増えてきており、医療機関はそのターゲットに据えられているのです。
今や診察や医療業務にもITシステムは不可欠ですし、医療機器の多くが、ITシステムと同様の汎用OS、ネットワークに依存しています。むしろ、企業システム以上に高い可用性が求められるといっていいでしょう。標的型ランサムウェアは、こうした医療システムに感染し、動作不可能な状態に陥れ、個人のPCに感染する場合よりも多額の身代金を奪い取ろうとします。過去にも医療機関に大きな被害をもたらしてきました。
例えば、米国の病院には、16年に泣く泣く多額の金銭を攻撃者に支払ったケースもあれば、予定していた手術などを延期したり、紙と人手によるオペレーションに戻したりするケースもありました。国内では奈良県の宇陀市立病院が18年にランサムウェアに感染し、電子カルテが参照できなくなる事態に陥っています。なお、宇陀市ではこの件に関する詳細な報告書を公開しています 。
そして今、残念ながら、新型コロナウイルスとの戦いで最前線に立つ医療機関をターゲットにした攻撃が発生しており、筆者は怒りを覚えています。 新型コロナウイルスの流行に合わせるかのように、医療機関を狙うランサムウェアが観測され始め、Interpol(国際刑事警察機構)が注意を呼びかけている他、すでに新型コロナの感染者が入院しているチェコの大学病院が被害に遭い、ITシステムのシャットダウンを余儀なくされた事件が報じられています。
これに関連して米Microsoftが興味深い指摘を行っています。医療機関・病院を狙ったランサムウェア「REvil」の足掛かりとして、VPNアプライアンスの脆弱性が悪用されているというのです。Microsoftは事態を受けて、ターゲットとなった医療機関に通知を行ったといいます。
この攻撃はWannaCryのように脆弱性をついて勝手に拡散するわけではありません。最初の突破口はVPN製品の脆弱性ですが、その後は裏側に攻撃者がいて、侵入後にアカウント権限を昇格させ、システム内で横展開して侵害範囲を広げ、ランサムウェアに感染させるといった被害を与えます。また、VPNソフトウェアのアップデート機能を使ってマルウェア本体をインストールする手口も観測されているそうです。
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