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60人が自宅から「パプリカ」合奏、テレワークオーケストラの舞台裏 ばらばらの環境で統一感出せた理由#うちでもできたよテレワーク(3/5 ページ)

» 2020年04月28日 07時00分 公開
[谷井将人ITmedia]

テレワークで合奏ができるのか? 大変なのは音楽より個別連絡

 山口さんが今回の動画を完成させるまでに、ITと音楽の両面でそれぞれに難しさを感じていた。ITで難しかったのは「細かな連絡」「機材の違いによる音声のずれ」だったという。

 「参加者に高度なことを求めない」

 山口さんは企画を進行するため、このようなコンセプトを掲げていた。楽員の中にはITに詳しい人もいるが、スマホを使い慣れていない人もいる。演奏をいい音で収録しようとすると、それなりの専用機材や場所、ソフトウェアの操作などが必要になる。今回はITスキルの差を考慮して、簡単に録音できるようスマホで自撮りするスタイルを採用した。

 しかし、慣れていない人はそもそもカメラの起動ができないなど、自撮り動画の提出だけでも難しい状況が分かった。これを解決するため、山口さんはそれぞれの楽員と非常に細かく連絡を重ねた。

 山口さんのもとには、スマホの操作が分からないという連絡が相次いだという。iPhoneユーザーの山口さんは、「Androidスマホの操作が分からないといわれても私も分からないので、機種を聞いてネットで検索して取扱説明書を見て、メールで手順を書いて送る」という作業をひたすら繰り返した。

 参加者全体への連絡はグループLINEで送っていたが、何か困りごとがあった場合、楽員は当然それぞれ個別に山口さんに質問する。しかも、グループLINEで一括連絡できるのは30人程度。残りの30人は、個人LINE、Facebook、メール、TwitterやInstagramのダイレクトメッセージなど、各個人が使っているツールで連絡する。

 「机にPCとスマホを置いて、連絡が来れば通知が鳴るようにしておいた」と山口さん。家でもできる編曲などの仕事が手に付かない程度に忙しかったという。

機材の違いが意図しないずれを生む

 もう一つの困難が機材の違いだ。「テレワークでパプリカやってみた!」では、細かな調整は行わずに音声のタイミングだけを合わせているが、撮影機材の違いでフレームレートなど、動画のフォーマットが少しずつ違い、どんなにそろえてもだんだんずれてしまう現象が起きた。

 編集ソフトに由来するずれも深刻だった。音声編集ソフトなら4万4100分の1秒単位でタイミングを調整できるが、動画編集ソフトのタイミング調整は30分の1秒単位。どうしても細かい調整はできなかったという。ある程度は妥協し、必要に応じて機材のセッティングを確認するなど、参加者と連絡を取りながら修正していった。

 「演奏はできてるのに機材の問題でそろわないのは悔しかった」(山口さん)

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