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» 2020年05月04日 07時00分 公開

海外で進む「オンプレミス回帰」 その背景に何があるのか(2/3 ページ)

[小林啓倫,ITmedia]

オンプレ回帰の理由

 先ほど紹介したIDCの調査では、パブリッククラウド環境からの移行を決めた理由についても質問している。2019年の調査によれば、挙げられた理由のトップ3は「セキュリティ」(47%)、「コスト」(42%)、「パフォーマンス」(32%)となっている。それぞれの理由についてまとめてみよう。

セキュリティ

 オンプレ回帰の大きな理由として挙げられたセキュリティだが、そもそもクラウド移行に二の足を踏む企業が理由として挙げることが多いのも、このセキュリティである。もちろんクラウドサービス各社は徹底的なセキュリティ対策を自社プラットフォームに施しているのだが、クラウドは簡単な設定でリソースが使えるようになるため、ユーザー側のミスで大きな事故につながってしまう場合がある。またクラウドを利用して大規模なシステムを構築していたことが、事故の規模拡大にもつながり、それが大きく報じられてさらにクラウドのイメージを悪くするということが起きている。

 19年に起きた米金融大手Capital Oneの情報流出事故は、まさにそのような事例だろう。同社はAWS上に業務システムを構築していたのだが、ファイアウォールの設定ミスから不正アクセスを許し、約1億人の個人情報が流出してしまった。これだけでAWSのセキュリティが否定されたわけではないが、そのインパクトから、パブリッククラウドに対する不安を煽る結果となったのである。

コスト

 次に挙げられたのがコストだが、前述のDropboxの事例でも、それが移行の大きな理由となっている。実際に同社の場合、オンプレ回帰によって2年間で7500万ドル(約81億円)のコストを削減できたと報じられている。

 ただセキュリティと異なり、企業がパブリッククラウドへ「移行する」理由となっているのもこのコストだ。クラウドは初期投資がいらずにITリソースの利用が開始でき、またそれを使った分だけ支払えば良いため、多くの企業にITコストの削減という効果をもたらしている。

 一方で、まさにDropboxのように巨大なITリソースを使うようになると、逆に負担増に転じてしまう場合がある。またクラウドサービスの料金体系によっては、思わぬ形で料金が上乗せされたり、料金が複雑でトータルコストが算出しにくかったりするケースがあることも指摘されている。その結果、より管理しやすいオンプレ環境を再検討するというわけだ。

パフォーマンス

 パブリッククラウドはその名の通り、あたかも公共財のように万人向けにつくられているため、汎用性が高い。それはもちろんメリットなのだが、自社の業務やサービスから生まれる特殊なニーズに合わないと、デメリットにもなり得る。そしてこれもDropboxの場合と同様に、ITリソースを大規模に使うようになると、ちょっとしたチューニングが大きなパフォーマンスの差につながる可能性がある。そこで自社に合った環境を自ら構築するため、オンプレ回帰する企業も出てきているのである。

 またダウンタイムに関する要求も、パブリッククラウドを再考する理由の一つとなっている。もちろんオンプレに回帰すればダウンタイムが無くなるわけではないが、より自社のニーズに合わせた運用が可能になるわけだ。

その他の理由

 他にもいくつかの理由が企業にパブリッククラウド活用の再考を促しているが、近年注目されている理由の一つに、コンプライアンス(法令順守)が挙げられる。クラウドに影響する法規制の例として、もっとも分かりやすいものがEUのGDPR(一般データ保護規則)だろう。この規則では、個人情報保護を強化するために、EU域内で集められた個人データのEU域外への移転に制限をかけている。そのためEU内の顧客のデータは、(例外規定が設けられているものの)EU内のサーバで管理することが基本となる。その他にも情報管理の仕方について細かい規定があり、企業はそれに対応しなければならない。

 もちろん主要なクラウドサービスはGDPR対応をうたっているが、他にも同様の規制が世界各地で進む傾向にある。そうした規制に柔軟に対応するために、オンプレ回帰を選択肢に加える企業が出てきているのである。

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