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ニーズ急増のリモート塾、学びを止めない工夫とは? カギはAIと人の役割分担(2/2 ページ)

» 2020年05月05日 07時00分 公開
[村上万純ITmedia]
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「オンラインでも授業の質は落ちていない」 AI教材と講師の役割

 atama plusが提供する教材の特徴は、生徒一人一人の理解度に合わせた問題をAIがレコメンドしてくれる点だ。生徒はノートと筆記用具、学習教材「atama+」を使えるPCやタブレットなどの端末を用意する。その後は、どの科目をどこまで学ぶかの目標を決めた後に、各科目の理解度をはかる問題に解答。その結果を基に、AIがあらかじめ用意された問題の中から受講者に合った問題をレコメンドする仕組みだ。学習は、講義動画を見てメモをとったり、例題を解いたりしながら進めていく。人間の講師は、専用の管理画面を確認することで、生徒の学習状況を1人ずつモニタリングできるようになっている。

 同社のサービスを導入する教室では、AIによる学習の効率化に加えて、人間の講師によるサポートを大切にしているという。生徒のやる気を引き出したり、困っていることがないかを聞き出したりする細やかなケアはAIには難しい。「AIがティーチングをし、人がコーチングをするという役割分担が重要です。AIが生徒ごとの学習を最適化してくれる一方で、生徒の気持ちに寄り添うのは人間の先生の役目といえます」と稲田代表取締役は説明する。

 稲田代表取締役によると、atama plusを導入した学習塾は、オンラインになっても授業の質は落ちていないという。講師1人で担当する生徒の人数や、生徒をサポートする方法は教室によって異なるが、例えば講師1人で10〜20人ほどを受け持つ教室の場合は、オンラインでも同様の人数に対応している。

 対面授業との違いは、生徒の学習状況の把握や、声掛けの方法だ。対面授業の場合は、講師が生徒の様子を見ながら気軽に声を掛けることができるが、オンラインではこれが難しい。しかし、atama plusの教材では講師が自身のタブレットなどで生徒の学習状況を確認できるため、大きな混乱は起きていないという。また、生徒への声掛けは電話で代替している所が多いとしている。

 「生徒とのコミュニケーションにZoomを活用する塾もありますが、多くの塾では『電話ならパッとコミュニケーションできて良いね』となっているようです」(稲田代表取締役)

カギはAIと人の役割分担

 新型コロナがいつ収束するか分からない現状では、オンラインで授業を実施できることは、生徒、保護者、学習塾の3者にとって心強いといえる。稲田代表取締役は、これからの教育はオンライン授業とオフライン授業の両方が求められていくのではと考える。「新型コロナによって、外に出たくない、人と触れ合いたくないという価値観ができてしまいました。オンライン授業のニーズは緊急事態宣言が終わっても継続するでしょう」(同)

 こうした変化の中で、稲田代表取締役は「生徒の顔色やノートの中身は見られないが学習状況は(教材を通して)想像できるという状況で、新しい講師の役割ができていけばいいと思っています」と話す。講師の役割は、生徒に伴走して自律的な学びをサポートすること。それは対面でも遠隔でも変わらないが、時には新しいツールの使いこなしや、遠隔ならではの細やかなコミュニケーションなども必要になってくるだろう。atama plus側も、プロダクトの提供だけでなく、導入先の塾への指導を丁寧に行うなど、サポート体制の強化を続けていく。

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