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“繋がりすぎる”ネット時代の誹謗中傷問題、解決策はあるのかotsuneの「燃える前に水をかぶれ」(1/5 ページ)

» 2020年06月11日 09時00分 公開

 ネットウォッチャーにして炎上対策会社を運営する著者が、SNSにおける誹謗中傷問題をていねいに解き明かします。


 2020年5月23日、ある恋愛リアリティーショー番組出演者の死亡事件があり、それをきっかけにインターネットにおける悪質投稿についての議論が盛り上がりました。その番組の出演者であった女子プロレスラーは、SNS上で視聴者たちからの批判的な投稿が殺到していたことに苦しんでいたと事件前日までのSNS投稿から強く推測されています。

 番組内でキレ役のような演出をされたことで、その出演者は非常識にワガママな人物であるというキャラ付けがされており、感情移入した視聴者がSNS上で感情をぶつけやすい構図になっていました。

 この流れをうけて、芸能人やインフルエンサーなど著名人が次々と自分に誹謗(ひぼう)中傷をしているネットユーザーに対して訴訟をすると表明しています。

 SNS運営会社への情報開示請求の手続きでも、投稿者の電話番号を含めた情報を開示するように改正する方向になるようです。

悪口を言われる方と悪口を言う方には非対称性がある

 ネットの悪質投稿について民事訴訟をする費用は、弁護士に依頼したら着手金など合わせて最低でも数十万円から100万円以上は簡単にかかります。

 もし海外企業のWebサービスで投稿された書き込みに対する情報開示請求であれば、日本語の開示請求を外国語に翻訳する費用もさらにかかるため、ばかになりません。

 仮に民事訴訟で損害賠償が認められたとしても、書き込みをしたユーザーが無職や低収入で支払い能力がないと実質的に回収が困難なこともあります。また、刑事的な訴えをしても相手がメンタルヘルス面で責任が問えない事例もあったりしました。

 つまり現状は、ターゲットにされた被害者は正式な手続きで対処することにかなりの費用や手間がかかり、罵詈雑言を投稿する方は、アカウントを捨てて簡単に逃げることもできるという、かなり非対称な状態になっています。

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