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“繋がりすぎる”ネット時代の誹謗中傷問題、解決策はあるのかotsuneの「燃える前に水をかぶれ」(2/5 ページ)

» 2020年06月11日 09時00分 公開

有名税という損得勘定が成り立たなくなった

 「有名税」という俗語もかなり昔から使われています。芸能活動やスポーツ選手や大手漫画家など、知名度が高い有名人は一般人よりも些細(ささい)なことを報道されたり注目されたりして批判されやすいというデメリットがあります。その現象を表現した言葉として「有名税」が使われています。

 有名人はその知名度においてさまざまなメリットがあるので、些細な批判は無視して受け流せ……という風潮(スルー力をつけろ)も昔から存在しています。これも裁判などのコストの非対称性から導き出された損得勘定から来ているものだといえます。

 また芸能人や売れっ子作家など超有名人であれば、マネジャーや出版社などの代理人が間に入り、批判を受け止めて処理することで本人を守るシステムを取ることも多いです。

 しかしネット時代においては、さほどメリットを享受しているわけでもない一般人の延長線のような人が、超有名人レベルの嫉妬などのデメリットを一人で受け止めてしまう事態になってしまっています。

 普及したネットのパワーによって情報流通がいちじるしく加速したことで「他にメリットがあるから、多少の悪口は目をつぶろう」という損得勘定が崩れてしまったといえます。

悪質な投稿を明確に判別することは難しい

 悪質な投稿と一言で表現している行為でも、本来はもっと細かい分類が必要です。

 「SNS上でなんらかの悪意をぶつけられて傷ついた」という受け取り側の心理があります。受けた傷のデメリットは大差なくほぼ同じだとしても、投稿側の意識には思っているよりもグラデーション状に違いがあります。

 この違いを考慮せずに「悪口は全部ダメ」とルールで取り締まろうとしたり、「感想や指摘も悪口なのか」と対策に完全拒否反応を起こすのも大雑把(ざっぱ)な考えでしょう。なんでもごっちゃに扱うことは雑な議論になってしまい改善策もボヤけてしまいます。

 実際の名誉毀損裁判でも投稿の文面の形式だけでなく、双方の社会的状況や関係性などさまざまな要素から賠償責任などが判断されています。たとえ本人には耳の痛い激しい投稿であっても、公益性の高い報道に該当すると判断されたことで免責された事例も過去にはあります。

 つまり、文面上だけでここまでは正当な指摘で、これ以上は誹謗中傷だと線引きして厳密にルール化することは現実的には難しいし不可能であるといえます。

※文面上で明確な脅迫や殺害予告にあたる投稿は警察に届けて事件として対処されるので例外になります

photo 「悪口」にも段階がある

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