数十キロから数百キロ離れた遠隔地のプレイヤー同士で、同じ部屋にいるかのような音楽セッションができる。ヤマハが6月29日に正式スタートした低遅延遠隔合奏サービス「SYNCROOM」はそんな夢のような技術だ。だがこの技術自体は既に10年の稼働実績を持つ。
コロナ禍で身動きが取れない中、ミュージシャンにとっての救世主とも言えるSYNCROOMはどんな意図で生まれたのか、何ができるのか、基になったサービス、NETDUETTOとはどう違うのか。10数年前から開発を進めてきた原貴洋さんをはじめとする、SYNCROOMチームのみなさんに疑問を全てぶつけてみた。
ヤマハの出席者は次の通り(所属名は6月29日現在):
筆者が一般公開前のNETDUETTOアルファ版をテスターとして触ってから10年。5Gを見据えたサービスとして、SYNCROOMの前身であるNETDUETTOに着目し、2018年に取材をしてから1年半。このサービスは現在、以前とは違う形で注目を浴びている。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により音楽の世界は壊滅的被害を受けた。感染症予防の観点から演奏者が集まって合奏できなくなり、やれば非難されるような情勢になった。ライブ会場がクラスターの発生源になり、コンサート会場やライブハウスなどの「ハコ」が活動停止に追いやられた。ミュージシャンたちは自宅から1人で“アンプラグド”な演奏を届けるくらいしかできない。
他のプレイヤーと合わせて演奏する合奏の楽しみを奪われたのは、プロミュージシャンだけでない。アマチュアもだ。リハスタ(リハーサルスタジオ)に入って練習すらできない。
そこで注目されたのがNETDUETTOだ。PCにソフトウェアをインストールし、オーディオインタフェースに楽器やマイクを接続すれば、高速なインターネット接続によって遠く離れたバンドメンバーと同じスタジオにいるような感覚で演奏ができる。
ビデオ会議や音声チャットで同じようなことをしようとすると、遅延が大きすぎて合奏が成立しない上、音質も不十分なのが大半だ。NETDUETTOはその壁を乗り越える技術を提供するサービスで、コロナで分断されたミュージシャンたちを再びつなげてくれるツールとなっている。
そのタイミングで、NETDUETTOの後継としてSYNCROOMが発表された。これはどのような意図で生まれたのか。
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