SYNCROOMは低遅延で合奏できるシステムだが、低遅延は時間を削る小さな積み重ねで実現できるものだ。インターネット接続ではIPv6 IPoEにできるならその環境で。Wi-Fiではなく有線のイーサネットで。PCの性能はできるだけよいものを。そして、オーディオインタフェースの中でも遅延が少ないものを選ぶとよいという。
原さんはSYNCROOMがコロナで注目されるようになったことについて「正直複雑な気分でした」と述懐する。
もともとSYNCROOMは家にいながら合奏できるメリットを訴求するもので、今までの音楽活動に「プラスアルファ、プラスワン、加わるといいかもね」くらいだった。それが「どうしても必要なもの、切実なものに変わってきた」という。これでは手放しで喜べない。
だが、コロナの影響の中で「NETDUETTOがあることで気持ちが救われた」という感想をもらえるようになった。
ヤマハのメインビジネスである音楽機器はこのところ上り調子だ。テレワークのビデオ会議を高音質にするオーディオインタフェースの人気商品、AG03/06はいまだに品薄で「工場のキャパシティーを超えた」状態。潤沢になるには秋まで待つ必要があるそうだ。ギターやサイレント楽器など、手頃な楽器の購入も伸びているという。
これまでのNETDUETTOの利用者は、技術のことをかなり分かっている人だったが、これからはオーディオインタフェースやレイテンシといった難しい技術、用語を知らない人たちにも優しいサービスにしていかなければならない。
直接競合するサービスはないが、DiscordやZoomといった、遅延が少ないことをうたうサービスは出ている。それでも「今の時点では音楽をやるレベルでの遅延、音質で一定の優位はある」。
SYNCROOMは「音楽を成立させるために、音質、低遅延に全振りしている。会議システムに使うなどのある意味メリットを捨てて、音楽セッションができる方にパワーを全振りしている」という、パラメーター極振りサービスだ。
オンラインセッションは10年の歴史を迎え、セッション相手をSNSで探して回る人、オープンルームで一期一会のセッションを楽しんでいる人など多様な利用方法が生まれている。プロのミュージシャンも積極的に利用するようになった。SYNCROOMではスマートフォンがあれば手軽に演奏に参加できるように裾野の拡大が期待できる。「おうちでセッション」はごく普通の音楽形態になっていくのかもしれない。
6月30日追記:
筆者の自宅から約300km離れたベースプレーヤーとSYNCROOMを使ってオンラインセッションをしてみたのだが、まったく違和感なく演奏ができた。こちらはギターとボーカル、先方はベースで、うろ覚えなクリームの「Sunshine of Your Love」。レイテンシは常時20msくらいで、演奏を合わせても問題ない。
「SYNCROOMやってみます?」とSNSで声をかけてからわずか数分でオンラインセッションは始まった。「お昼で呼ばれたので」で今回のセッションは終わり。そんなまったく新しい音楽スタイルが、今、そこにある。
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