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AIが生成した「架空のモデル」は人間の仕事を奪えるか? 実力を確かめてみた(2/2 ページ)

» 2020年07月20日 08時00分 公開
[吉川大貴ITmedia]
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結局、実在のモデルの仕事は奪えるの?

INAI MODEL公式サイトのサンプル

 だが、現実のモデルを置き換えることが出来そうかと言われると、「このままでは難しいのではないか」と筆者は感じた。じっくり見たときの違和感もそうだが、他に2つ理由がある。

 1つは、元画像に求められる制約の多さだ。INAI MODELのAIは(1)顔が正面を向いている(体は斜めでも可)、(2)眉が見えている、(3)口を大きく開いていない、(4)顔に眼鏡やアクセサリーを着けていない、(5)顔に影が入っていない──などの条件を全て満たした画像でなければ、そもそも顔を加工できない。

 つまり、眼鏡をかけたモデルや、口を大きく開いた笑顔のモデルの画像は生成できない。前髪の長いモデルや鼻ピアスを付けたモデルなども難しい。

 余談だが、今回の元写真を撮影したとき、新型コロナウイルスの影響で近所の美容院が休業しており、髪を切れなかったため、筆者の前髪はかなり長かった。そのため何度撮影しても顔に前髪の影が入ってしまい、条件を満たす写真を撮るのに苦労した。筆者は普段眼鏡をしているため、これも外す必要があった。

 もう1つは、ユーザーが写真を持ち込む場合は、首から下のクオリティーをユーザー側で高めねばならない点だ。INAI MODELでは、運営側が許可を得て集めた画像を加工・販売するプランと、ユーザーが持ち込んだ画像を加工するプランを提供している。後者では、顔の加工はAIに任せるとしても、画像の用途に沿った体形の被写体や衣装は、ユーザー側で準備する必要がある。

 質の高い写真を用意するには“自撮り”では不十分なため、カメラマンを用意し、適切な背景で写真を撮らねばならないのもネックだ。筆者も今回、元写真を用意する際に、撮影に協力してくれる人や、撮影できる場所を探すのに時間を要した。

 特にコロナ禍の今は、複数の人が集まると感染リスクが高まるため、モデルの素材になるような元写真を用意するのは大変かもしれない。

 確かに人間のモデルには、スキャンダルを起こすリスクや、撮影した画像を永久に使えるとは限らない課題がある。しかし、いろいろなアクセサリーやファッションを試したり、多様な角度や表情で写真を撮ったりできる。そのため、現時点では架空のモデルが人間のモデルにとって代わることは難しいだろう。

 一方で、INAI MODELには被写体の肌荒れや顔立ちをあまり気にしなくて良いといったメリットもある。実際、化粧品のWeb広告などにINAI MODELの画像を利用する企業も少しずつ出てきている。

 イメージナビの古海祥延さん(イメージズDiv イメージズチーム)は、企業がINAI MODELに関心を持つ理由について「質の良いモデルに仕事を頼む際のコストが高くなっている他、用途によってはモデルから画像の利用を拒否されることがあり、人間のモデルを確保しにくくなっているため」と話す。

 イメージナビは、INAI MODELに課題があることを把握しており、今後はデータグリッドと協力してAIの性能や画像のクオリティーを上げていきたい考え。古海さんは「顧客に新しいプロモーションの手段を提案していきたい。将来はオプションとしてモデルの全身を生成する機能も提供したい」としている。

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