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マイ3Dプリンタは失敗できる、それが楽しい 熱溶解積層の立体製造機で40時間の造形に挑戦した3Dプリンタ買っちゃいました(3/3 ページ)

» 2020年08月24日 14時15分 公開
[松尾公也ITmedia]
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 問題のボーデンにねじ込む部品を締め直して再スタート。だが、途中で、空中に浮いているケーブルが、サポートとなっている支柱にザザッと当たる音が気になる。前回、前々回とサポートが外れていたのはケーブルが邪魔だったのが問題だったのかもしれない。そこで思い出したのが、付属していた結束バンド。こういうときにのために使うのか。ちなみにこのボーデンという機構、英国の自転車老舗メーカーであるRaleighを創業したサー・フランク・ボーデンがブレーキのために開発したことに由来する。

photo 問題の部品を締め直し、結束バンドを追加した

 もう1つ、難関があった。長時間3Dプリンタを稼働させていると、どうしても一時的に休止しないといけないときが生じる。別の場所で印刷していればいいのだが、印刷を始めてしまった以上、しょうがない。そういうときのために、Ender-3にはレジューム機能がある。プリント途中でポーズボタンを押すと、その状態をプリンタが記憶してくれる。ノズルがホーミングして、そこで電源をオフにしても大丈夫になる。再び電源を入れたら、プリントを継続するかどうかという表示が出て、OKを押すと、そのままプリントを再開する。

 この機能を試すのは初めてだったので不安だったが、問題なく印刷が再開できた。その層だけちょっと出っ張りは生じてしまったが、そこはあとでやすりでもかけておこう。停電やフィラメントの交換時にも使えるらしいので、いざというときには思い出しておこう。

 そうして40時間(正確には39時間36分)と、フィラメント648g(推定)をかけた妻のライフサイズの頭部が出来上がった。レジュームで浮かび上がってしまった積層はヤスリで削ってきれいにしているところだ。

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photo ちょっと見は古代の大理石彫刻のようだ

 それがバイオプラスチック素材であっても、レジンであっても、手で触れることができるのは単純にうれしい。小鼻の形とか、少し違うところがあっても、それはそれで本人を思い出すことができるので、対象物があるのはよいものだ。既に歌声でも同じようなことをしているので、その辺りへの抵抗感はまるでない。

 写真を元に3Dモデリングして、それを3Dプリントするという等身大フィギュアは、新たな形の彫刻ではないかとも自負している。

 リアルな彫刻を創造できるようになるまでいったい何年の修行を要するのか。そこにはものすごい試行錯誤があるはずだ。3Dモデリング+プリントの世界もまた独特のノウハウがあり、簡単にはいかない部分が多い。僕が今やっていることは、SFに登場するマッドサイエンティストっぽくはあるけど、小さな失敗を繰り返してその成果を基にノウハウを獲得して成立するというところは共通する。

 今の3Dプリンタの世界は、その失敗と対策を共有していくことで、恐ろしい勢いで発展している。僕が使っているEnder-3もオープンソースハードウェアの1つ。さらに元をたどれば、自分自身を3Dプリントで作り上げる3Dプリンタという「RepRap」というオープンソース3Dプリンティングプロジェクトに行きつき、そこからはPrusaというさらに高機能な3Dプリンタも生まれている。

 僕が運営に関わっているマストドンインスタンス「グルドン」はユーザー数4000人ちょっとの、ガジェットネタを中心とした小規模SNSだが、現在、猛烈な3Dプリンタブームが巻き起こっている。ここ3週間くらいで40台くらいの3Dプリンタが購入され、失敗例を含む作品やその対策、改良ノウハウなどがものすごい勢いでシェアされている。カメラ周辺機器、iPhoneケースやスマートフォンスタンド、オリジナルのSSDスタンド、自転車用マウントなど、実用的な使い道を見つけている人も多い。

 みなさんも一緒に楽しく失敗してみませんか?

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