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インタビュー
» 2020年08月28日 07時00分 公開

SIを封印して“なるべく作らない” NECの「政府向けクラウド」独自戦略(1/3 ページ)

NECが7月から、日本政府向けのクラウド事業に本格参入している。だがこの領域には、外資系大手のAWSや、国産ベンダー数社が既に参入している。競争が激化する市場でどのように戦っていくのか、NECの担当者に聞いた。

[谷川耕一,ITmedia]

 NECがこの7月から、日本政府向けのクラウド事業に本腰を入れている。オンプレミスサーバをAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureなどのパブリッククラウドと閉域網で接続するサービスの提供を皮切りに、11月からは、クラウド基盤「NEC Cloud IaaS」を強化。政府のセキュリティ評価制度に準拠した新バージョンを提供する予定だ。

 だが既に国内クラウド市場では、NTTデータや富士通などの国産ベンダーが政府向けサービスを強化している。NECの政府向けクラウドは、先行するベンダーと何が異なるのか。激化する政府向けクラウドの市場競争の中で、NECは存在感を見せられるのだろうか。

デジタル・ガバメントでの利用を目指す

 各社がこぞって政府向けクラウドに参入する背景には、政府が2018年1月に「デジタル・ガバメント実行計画」を策定し、ITシステムにクラウドを使う方針を打ち出したことがある。デジタル・ガバメントとは、政府や自治体が提供する行政サービスのバックエンド/フロントエンドをデジタル化し、国民の利便性を高める施策。政府は19年から、この実現に向けて本格的に動き出している。

 NECも、自社のサービスをデジタル・ガバメントで使ってもらうことを目指しているわけだが、昨今は新型コロナウイルスの感染が拡大し、政府が運用するITシステムでも、社会情勢の変化に柔軟に対応できる仕様が求められている。

“なるべく作らない”アプローチで差別化

 こうした社会情勢を踏まえた政府向けクラウド事業の戦略について「従来のように一からITシステムを作るのではなく、実績あるサービスを組み合わせる。それをNECからの(政府への)提案のスタンダードとする」と言うのは、NECの諸藤(もろふじ)洋明氏(第一官公ソリューション事業部マネージャ)だ。

photo NECは“なるべく作らない”アプローチをとる

 企業ではAPIなどを活用し、既存のシステムとSaaSなどを連携させて利用することが多い。コンテナ技術を活用してアプリケーションをパッケージ化し、環境を選ばず起動できるようにする場合もある。政府向けのシステムにも、これらと同様の手法でアプローチし、ゼロからスクラッチで開発する時間を短縮するのが、NECの政府向けクラウド事業の方針だという。

 NECがもう一つ、政府向けクラウド事業でこだわるのが「ユーザー体験」だという。従来は一度システムを構築すれば、UI(ユーザーインタフェース)はそのままというケースもあったが、今後は政府の既存システムをやみくもにクラウド化するのではなく、担当者にとって使い勝手の良いものにする考えだ。「構築したら “塩漬け”にするのではなく、現場での業務改善を継続的にサポートする」と諸藤氏は話す。

独自のIaaSでセキュアなマルチクラウドを

 NECでは、政府のデジタル・ガバメントに適した環境は、さまざまなクラウドを適材適所で組み合わせられるマルチクラウドだと考えている。同社のマルチクラウドの概念には、複数のパブリッククラウドだけでなく、オンプレミスやプライベートクラウドを組み合わせることも含まれる。

 NECが今回、SIによってゼロからデジタル・ガバメントの仕組みを作るのではなく、AWSやAzureといった外部企業のパブリッククラウドを閉域網でつなぐサービスを提供するのは、このマルチクラウド環境を迅速に構築するためだ。

 また、11月から提供するNEC Cloud IaaSの強化版は、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度「ISMAP」、米国政府機関におけるクラウドセキュリティ認証制度「FedRAMP」に対応する。マルチクラウドを構築する際に、パブリッククラウドには置けないようなセキュリティ要件が高いシステムの運用環境には、このNECオリジナルのクラウドを選べるようにしている。

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