政府系クラウドに参入した富士通は、AWSとどう戦うのか? 狙いは「政府共通プラットフォーム」に載らないシステム(1/3 ページ)
国内クラウドサービス市場では現在、企業向けだけでなく、政府向けITシステムの分野でも外資系のクラウドサービスが先行している。例えば日本政府は、10月に運用を始める予定の「政府共通プラットフォーム」に、Amazon Web Services(AWS)を採用する方針を固めている。
そのような状況下で富士通は3月6日、政府向けクラウド事業に本格参入し、既存のクラウドサービス「FUJITSU Cloud Service for OSS」を改良して中央省庁や関連機関に提供すると発表した。サービス開始は5月で、22年度末までに100以上のシステムに導入する目標を掲げている。
富士通はなぜ、AWSが先行する中で、政府向けクラウド事業への参入を決めたのか。FUJITSU Cloud Service for OSSをベースにした政府向けクラウドサービスとはどのようなものなのか。富士通の担当者への取材をもとに、政府向けクラウド事業の戦略を探る。
狙いは「政府共通プラットフォーム」に載らないシステム
総務省が手掛けるAWSベースの政府共通プラットフォームは、これまで府省が別々に運用してきた情報システムをクラウド上に集約したもので、運用体制の統一によるコスト削減効果とセキュリティ強化を見込んでいる。これについて「政府共通プラットフォームに載るのは政府全体の資産の8.8%で、ごく一部に過ぎません」と指摘するのは、富士通の出口雅一氏(戦略企画・プロモーション室 クラウドストラテジー統括部 シニアディレクター)だ。
政府共通プラットフォーム以外にも、政府全体としてはITシステムをクラウド化するニーズが膨大にあることが想定されるため、富士通はまず、その中の基幹系システムのクラウド化を獲りに行く考えだという。
また、政府系クラウドへの参入は、AWSの動きを見て急きょ立ち上げたものではなく、「3年くらい前から計画してきたもので、米国政府のクラウドサービスの調達基準である『FedRAMP』をモデルにしています」と出口氏は明かす。
政府がIT化に注力、クラウドベンダーに追い風
クラウドベンダーが政府系クラウドの分野に力を入れ始めている背景には、政府がここ数年間で、ITを活用した国づくりに舵を切ったことがある。
18年1月に策定した「デジタル・ガバメント実行計画」で、政府のITシステムにクラウドを使う方針を打ち出した。デジタル・ガバメントとは、政府や自治体が提供する行政サービスのバックエンド/フロントエンドをデジタル化し、国民の利便性を高める施策を指す。政府はその一環で、保有するデータを民間に公開し、広く活用できるようにすることなども計画に記載済みだ。
「クラウド・バイ・デフォルト原則」によって、政府情報システムを整備する際には、クラウドサービスの利用を第一候補とすることも記載している他、19年の改訂では、AIやIoTなどの新しい技術を積極的に活用することも盛り込んでいる。
富士通は政府の基幹システムのクラウド化に照準
こうした政府の動きを踏まえた商品戦略について、出口氏は「富士通には5GやIoT、AIの『Zinrai』などのデジタルテクノロジーがあり、それをデジタル・ガバメントで利用してもらうことを考えています。その際にはクラウドも提供すべきだと判断しました」と説明する。
出口氏によると、政府がデジタル・ガバメントを実現するために必要なプロセスは、民間企業が取り組んでいるデジタル変革のアプローチと基本的には同じだという。具体的には、サービスの自動化や迅速なデータ公開を実現する上では、開発部門と運用部門が一体となって小単位での実装とテストを繰り返す手法、すなわちDevOps的な体制でのアジャイル開発がまずは必要になる。その体制で、AIなども活用して新しいデジタル変革のための仕組みを作るというわけだ。
それと並行して必要なのが、既存の基幹系システムのクラウド化だ。基幹系システムのクラウド化では、オンプレミス型のシステムに大幅に手を入れて、サーバレス技術などを採用してクラウドネイティブなアーキテクチャを目指すものもあるだろう。その一方で、コストと工数を削減するため、ゼロから再設計せず、そのままクラウド化するものも少なからずあるはずだ。
どちらの場合でも、クラウドで基幹系システムを動かすとなれば、当然ながらミッションクリティカルな要件に耐えうる高い信頼性と可用性が求められる。富士通がこれまで提供してきたクラウドサービスは、そういった基幹系システムを動かすためのものになっていると出口氏は強調する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
国内クラウドベンダーの生存戦略
AWSやAzure、GCPが国内クラウド市場を席巻し、国内クラウドベンダーは厳しい状況に置かれている。そんな中で生き残るために、各社はどんな戦略を採ればいいのだろうか。主要な国内ベンダーへの取材を基に、各社の今後の方針を探る。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
フランスのスーパー数百店舗で冷蔵設備にサイバー攻撃 温度が最高50度に上昇し食品大量廃棄に
-
2
Anthropic、自己複製AIの「兆し」を指摘 55ドルのTVボックス15台で26Bモデルが稼働
-
3
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
4
日本人の大腸がん、約半数に“腸内細菌の毒素”が関与 40歳以下の発症は7割 東大・阪大が200人を全ゲノム解析
-
5
AnthropicのAI、未解決殺人事件で警察に虚偽の情報提供 米政権は「通知と是正は義務」と警告
-
6
初めての一眼にフルサイズを選びたい、でも高くて重いのは嫌……「EOS R8 Mark II」はそういう人のためのミラーレスだった
-
7
「コミューン」不正アクセスでLINEヤフー、Sansan、パナソニックでも会員情報漏えいの可能性
-
8
「お前たちのクラウドはわれわれのもの」 IDCFクラウドの管理画面に出た攻撃者のメッセージ 内容に運営元は
-
9
Meta、同社最大のAIモデル「Muse Wonder」発表 記憶力と粘り強さを強化、AIエージェント「Muse」にも搭載へ
-
10
MicrosoftのナデラCEO、「SIモデルは“内部リスク”として扱うべき」とXに投稿 統制はモデルの外に置くよう提言
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR