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» 2020年04月02日 07時00分 公開

政府系クラウドに参入した富士通は、AWSとどう戦うのか? 狙いは「政府共通プラットフォーム」に載らないシステム (1/3)

富士通が2020年5月から、政府向けクラウド事業に本格参入する。だが、この事業領域では、政府が「政府共通プラットフォーム」にAmazon Web Services(AWS)を採用する方針を固めるなど、外資系クラウドが先行している。こうした中での事業戦略を、富士通に取材した。

[谷川耕一,ITmedia]

 国内クラウドサービス市場では現在、企業向けだけでなく、政府向けITシステムの分野でも外資系のクラウドサービスが先行している。例えば日本政府は、10月に運用を始める予定の「政府共通プラットフォーム」に、Amazon Web Services(AWS)を採用する方針を固めている。

 そのような状況下で富士通は3月6日、政府向けクラウド事業に本格参入し、既存のクラウドサービス「FUJITSU Cloud Service for OSS」を改良して中央省庁や関連機関に提供すると発表した。サービス開始は5月で、22年度末までに100以上のシステムに導入する目標を掲げている。

 富士通はなぜ、AWSが先行する中で、政府向けクラウド事業への参入を決めたのか。FUJITSU Cloud Service for OSSをベースにした政府向けクラウドサービスとはどのようなものなのか。富士通の担当者への取材をもとに、政府向けクラウド事業の戦略を探る。

photo 富士通が政府系クラウド事業に本格参入する

狙いは「政府共通プラットフォーム」に載らないシステム

 総務省が手掛けるAWSベースの政府共通プラットフォームは、これまで府省が別々に運用してきた情報システムをクラウド上に集約したもので、運用体制の統一によるコスト削減効果とセキュリティ強化を見込んでいる。これについて「政府共通プラットフォームに載るのは政府全体の資産の8.8%で、ごく一部に過ぎません」と指摘するのは、富士通の出口雅一氏(戦略企画・プロモーション室 クラウドストラテジー統括部 シニアディレクター)だ。

 政府共通プラットフォーム以外にも、政府全体としてはITシステムをクラウド化するニーズが膨大にあることが想定されるため、富士通はまず、その中の基幹系システムのクラウド化を獲りに行く考えだという。

 また、政府系クラウドへの参入は、AWSの動きを見て急きょ立ち上げたものではなく、「3年くらい前から計画してきたもので、米国政府のクラウドサービスの調達基準である『FedRAMP』をモデルにしています」と出口氏は明かす。

政府がIT化に注力、クラウドベンダーに追い風

 クラウドベンダーが政府系クラウドの分野に力を入れ始めている背景には、政府がここ数年間で、ITを活用した国づくりに舵を切ったことがある。

 18年1月に策定した「デジタル・ガバメント実行計画」で、政府のITシステムにクラウドを使う方針を打ち出した。デジタル・ガバメントとは、政府や自治体が提供する行政サービスのバックエンド/フロントエンドをデジタル化し、国民の利便性を高める施策を指す。政府はその一環で、保有するデータを民間に公開し、広く活用できるようにすることなども計画に記載済みだ。

 「クラウド・バイ・デフォルト原則」によって、政府情報システムを整備する際には、クラウドサービスの利用を第一候補とすることも記載している他、19年の改訂では、AIやIoTなどの新しい技術を積極的に活用することも盛り込んでいる。

富士通は政府の基幹システムのクラウド化に照準

 こうした政府の動きを踏まえた商品戦略について、出口氏は「富士通には5GやIoT、AIの『Zinrai』などのデジタルテクノロジーがあり、それをデジタル・ガバメントで利用してもらうことを考えています。その際にはクラウドも提供すべきだと判断しました」と説明する。

 出口氏によると、政府がデジタル・ガバメントを実現するために必要なプロセスは、民間企業が取り組んでいるデジタル変革のアプローチと基本的には同じだという。具体的には、サービスの自動化や迅速なデータ公開を実現する上では、開発部門と運用部門が一体となって小単位での実装とテストを繰り返す手法、すなわちDevOps的な体制でのアジャイル開発がまずは必要になる。その体制で、AIなども活用して新しいデジタル変革のための仕組みを作るというわけだ。

photo 富士通の出口雅一氏(戦略企画・プロモーション室 クラウドストラテジー統括部 シニアディレクター)

 それと並行して必要なのが、既存の基幹系システムのクラウド化だ。基幹系システムのクラウド化では、オンプレミス型のシステムに大幅に手を入れて、サーバレス技術などを採用してクラウドネイティブなアーキテクチャを目指すものもあるだろう。その一方で、コストと工数を削減するため、ゼロから再設計せず、そのままクラウド化するものも少なからずあるはずだ。

 どちらの場合でも、クラウドで基幹系システムを動かすとなれば、当然ながらミッションクリティカルな要件に耐えうる高い信頼性と可用性が求められる。富士通がこれまで提供してきたクラウドサービスは、そういった基幹系システムを動かすためのものになっていると出口氏は強調する。

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