IaaS、PaaSの市場で大きく先行するAmazon Web Services(AWS)、それを高い成長率で追いかけるMicrosoft Azure、日本市場への投資を加速しているGoogle Cloud Platform(GCP)――。日本のクラウド市場でも、海外発の“3大クラウド”の強さは圧倒的だ。
その反面、国内クラウドベンダーは苦しい状況に置かれている。各社は地道に自前のクラウドサービスを展開しているものの、3大クラウドと真っ向勝負しても勝ち目はなく、残された小さなパイを奪い合っている状況だ。厳しい環境下で生き残るために、国内ベンダーはどんな戦略を採ればいいのだろうか。
新連載「国内クラウドベンダーの生存戦略」では、主要な国内ベンダーへの取材を基に、各社の今後の方針を探る。第1回目は、パブリッククラウドサービス「Cloudn」(クラウド・エヌ)を2020年末に終了するNTTコミュニケーションズ(以下「NTTコム」)にフォーカスする。
NTTコムのクラウドサービスの歴史は長い。AWSから2年遅れではあるが、08年には「BizCITY」ブランドの提供を始めている。09年には「Bizホスティング」としてグローバル展開し、12年からはパブリッククラウドサービス「Cloudn」と、大企業向けのプライベートクラウドサービス「Enterprise Cloud」の2種類を提供している。
だが、18年には「企業のデータ利活用を支えるソリューションに注力する」との方針に転換し、19年にはクラウド技術を使ったデータ分析プラットフォーム「Smart Data Platform」を発表。直後の19年10月に、Cloudnの提供を終えることを明らかにした。
CloudnよりもEnterprise Cloudの方が収益への貢献度が高かったことも一因だというが、同社はこれからどのような形でビジネスを展開するのだろうか。
NTTコムの林雅之氏(クラウドサービス部 エバンジェリスト)によると、同社は現在、「ITを活用してさまざまな社会課題を解決できる世界『Smart World』の実現を目指す」というビジョンを掲げ、顧客企業のデジタル変革の支援に注力しているという。
その戦略の中核に位置付けているのが、前述のSmart Data Platformだ。同サービスでは、データ分析用のAI、IoTデバイスの管理システム、データのマネジメント基盤などをクラウド経由で提供している。
今後はクラウドサービス単体での拡販を目指すのではなく、このサービスの提供に注力し、ビジョンの実現を目指すという。クラウドはメインの商材ではなく、あくまでデータの利活用を支える重要な技術の1つというわけだ。
ただし、顧客がSmart Data Platformを稼働させるITインフラとしてプライベートクラウド環境を希望した場合は、自社のEnterprise Cloudを提案するなど、Smart Data Platformに付随する形でのクラウドサービスの販売は積極的に行う。
Enterprise Cloudは、ベアメタルサーバ、仮想サーバ、ストレージ、ハイパーバイザーなどを提供し、企業の基幹システムのプライベートクラウド化を支援するサービスで、他社のパブリッククラウドサービスと連携できる機能も持つ。
そのため、顧客が3大クラウドとの連携や、ハイブリッドクラウド環境を希望した場合は、AWS、Azure、GCPとEnterprise Cloudを組み合わせた形で提供できるという。
NTTコムは現在、異なるクラウドサービス同士をセキュアに接続するネットワークサービス「FIC」(Flexible InterConnect)や、データセンターのコロケーション(共同設置)サービス「Nexcenter」なども展開している。
Enterprise Cloud、FIC、Nexcenterを組み合わせて提供することで、顧客企業は3大クラウドを含めたアーキテクチャを1つの大きなITインフラとして活用し、データ分析などに取り組める。これがSmart Data Platformのメリットであり、NTTコムが描くビジョン「Smart World」の実現につながるというわけだ。
NTTコムの林氏は「メガクラウドベンダーは、Smart Worldを実現するためのパートナーです」と強調する。
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