NTTコムの協業戦略をみると、林氏の言葉通り、AWS専業のクラウド・インテグレーターであるサーバーワークスに出資し、積極的に協力する体制を築いている。米MicrosoftとはNTTグループ全体で戦略的提携を結んでおり、Azure以外のサービスでも連携を深めている。
米Googleとも友好的な関係を築いており、Google CloudがKubernetesをオンプレミス環境で動かせるツール「GKE On-Prem」を発表した際は、アジアの企業で最も早く自社サービス(Enterprise Cloud)との連携を検証した。
すなわち、どこか1つに肩入れすることなく、3大クラウドベンダーと幅広く協業する戦略をとっているのだ。「メガクラウドは、市場にクラウドを啓蒙(けいもう)し、マーケットを拡大してくれた存在でもあります」と林氏は言う。
NTTコムは今後、メガクラウドの採用に乗り遅れ、ようやくクラウド活用やデータの利活用を検討し始めた企業からのニーズが出てくるとみており、そうした企業へのSmart Data PlatformとEnterprise Cloudの拡販に商機を見いだしているという。
Smart Data Platformの販売に協力しているグループ企業、NTT国際通信の蝋山伸幸氏(ICTインフラサービス部 クラウドサービス部門 担当部長)は、「市場ではオンプレミス型のOracleやSAPのシステム、あるいはVMwareベースのシステムのクラウド化の要望があり、まずはそこに力を入れます」と説明する。
こうした企業がSmart Data Platformを採用し、Enterprise Cloudにデータを置くと、NTTコムはセキュリティや保護のソリューションを合わせて提供できる。ニーズに応じてFICなどのネットワークサービスを提供し、パブリック、プライベート、オンプレミス、エッジといった全てのシステムを接続することもできる。
「これらがそろっていることが、われわれの大きな強みとなります」と林氏は自信を見せる。
クラウドではなくデータにフォーカスし、それらを活用するプラットフォームを提供する――というアプローチは、これからデジタル変革に取り組みたい顧客企業には理解しやすいものだろう。安価なパブリッククラウドを提供するビジネスよりも、エンタープライズ領域では成功しやすいと筆者はみている。
NTTコムが今後、クラウド市場で勝ち残っていくためには、同社がメガクラウドベンダーと競争するのではなく、データ中心のソリューションで顧客のデジタル変革に貢献できる存在だと、市場で広く認識してもらえるかが鍵となりそうだ。
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