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» 2020年02月20日 07時00分 公開

国内クラウドベンダーの生存戦略:IIJの老舗クラウド「GIO」は、国内市場で存在価値を示せるか? AWSやAzureとの戦い方を問う (1/2)

IIJは約10年間、クラウドサービス「IIJ GIO」を提供している。だが、この10年間は外資系クラウドベンダーの伸びが著しく、AWS、Azure、GCPが国内市場で大きなシェアを獲得した。IIJ GIOは今後、国内市場でどのように戦っていくのだろうか。

[谷川耕一,ITmedia]

 インターネットイニシアティブ(IIJ)が国内クラウド市場に参入し、クラウドサービス「IIJ GIO」(GIO)をリリースしてから約10年の月日が流れた。その間に、ユーザー企業は約2000社に増え、クラウド上で稼働する顧客のサーバの数が約2万台に達するなど、同サービスは市場で一定の支持を獲得した。

 だが、この10年間は外資系クラウドベンダーの伸びが著しく、首位のAmazon Web Services(AWS)をはじめ、高い成長率で後を追うMicrosoft Azure、日本市場への投資を加速しているGoogle Cloud Platform(GCP)がシェアを大きく拡大。IIJら国内クラウドベンダーは現在、それら“3大クラウド”の陰に隠れている印象だ。

 こうした厳しい市場環境の中で、IIJは今後、クラウドビジネスをどう展開し、収益を確保していくのか。主要な国内ベンダーへの取材を基に、各社の方針を探る本連載「国内クラウドベンダーの生存戦略」の第2回目では、IIJの事業戦略を読み解いていきたい。

photo クラウドサービス「IIJ GIO」の公式サイトより

マルチクラウド/ハイブリッドクラウドのニーズが増加

 GIOは、IaaS、PaaS、SaaS、さらにはクラウドストレージやID管理など、多彩な機能を取りそろえたクラウドサービスだ。約2000社の顧客は、中堅中小企業からJR西日本などの大手企業まで多岐にわたる。神奈川県や埼玉県、渋谷区などの地方自治体なども利用している。顧客の77%は、DNSサービス(ドメイン名にひもづくIPアドレスの管理・運用)などのIIJのネットワークサービスや、メーラーを保護する「IIJセキュアMXサービス」などのセキュリティサービスとIIJ GIOを併用している。

 昨今は、AWSなどの大手パブリッククラウドとGIOの各種サービスを併用している顧客が多いことが、IIJの調査で明らかになっている。このことから、どこか1つのベンダーに依存するのではなく、適材適所でサービスを選び、組み合わせて利用したい――というニーズの高まりがうかがえる。

 さらに、機密性の高いデータを扱うシステムや、クラウド化が難しいレガシーシステムを扱っている顧客は、全てをパブリッククラウドに移行するのではなく、オンプレミス環境やプライベートクラウド環境と併用していることも分かっている。

 すなわちGIOのユーザーは、同サービスのみで自社の環境を構築するのではなく、マルチクラウド/ハイブリッドクラウドの形で利用するケースが多いといえる。

メガクラウドを再販しつつ、柔軟な営業体制で顧客獲得を図る

 このような流れを踏まえ、IIJは現在、メガクラウドの再販ビジネスに注力。GIO単体での販売にこだわらず、AWSやAzureの販売にも積極的に取り組んでいる。GIOをAWSやAzureと組み合わせたマルチクラウド環境や、メガクラウドとIIJのVMwareベースのプライベートクラウドを組み合わせた環境なども柔軟に提案している。IIJと他社のサービスの併用を希望する顧客には、サポート窓口の一本化も行っている。

 顧客企業が提供元の異なる複数のシステムを活用すると、各社のIT部門には、複雑化したITシステムの管理とセキュリティ確保という負担が生じる。IIJはこれを防ぐため、手厚いサポートを提供しているのだ。

photo IIJの染谷直氏(システムクラウド本部 本部長)

 IIJの染谷直氏(システムクラウド本部 本部長)は「技術面だけでなく、複数のベンダーとの契約や支払い先の取りまとめなど、事務作業を含めたサポートも行い、マルチクラウド活用を支援しています。これがIIJの強みです」と強調する。

 IIJが柔軟な体制を採る一方、AWSやMicrosoftが営業活動の際に他社サービスを勧めることはほぼないと言っていいだろう。メガクラウドベンダーは、自社のサービスで統一した環境を提案するケースがほとんどで、顧客企業のコストなどを考慮し、他社サービスと組み合わせた環境を積極的に提案することは極めて少ないといえる。

 IIJはここにも商機を見いだし、顧客のニーズに応じて多様なクラウドサービスを提供することで、メガクラウドベンダーとの差別化を図っている。言い換えれば、クラウドベンダーでありながら、クラウド分野のシステムインテグレーターにもなり、独自のポジションを築こうとしている。メガクラウドベンダーとは再販ビジネスで協力しているものの、つけ入る隙があれば攻め、顧客の流入を図っているというわけだ。

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