現在、悪い意味で新型コロナウイルスによる経済への影響が見られるテストケースになっているのが米国だ。感染拡大の収まらないカリフォルニア州では7月13日に2回目のロックダウン(都市封鎖)が宣言され、同州内のレストランや各種施設などの屋内での営業が禁止されている。
カリフォルニアでは3月に最初のロックダウンを実施。3カ月近くに渡って実施されたが、5月中旬以降、制限が段階的に緩和されていた。そこから日を置かず、7月の再ロックダウン発令となった格好だ。
継続的に営業できたスーパーマーケットやドラッグストアなど一部業種を除けば、多くの小売業は販売が大幅に制限された。レストランではテークアウト中心の営業となり、米Walmartなどの小売店ではオンラインで注文して店舗で受け取る「カーブサイド・ピックアップ」での販売を余儀なくされている。
日本にいる筆者は現地の状況を直接確認できないため、Google Mapsの情報や現地の友人の声を頼りにお気に入りの店が継続できているかを追跡しているが、一部が閉店したことを除けば、辛うじて営業が続けられているという状況を確認できている。
こうした米国での小売の営業状況について、レストランや店舗検索情報サービスを提供している米Yelpでは、7月22日(米国時間)に発表した最新レポートの中で、一時休業ではなく、閉店の比率が日に日に増加してることを報告している。Yelpは膨大な店舗データベースを持っており、それぞれの営業状況を適時追跡している。米国でロックダウンが宣言された3月中旬は閉店する店舗が多かったものの、その後は一時休業の比率が多くを占めるようになっていた。ところが感染拡大とともにロックダウンが継続したことで閉店の比率が徐々に大きくなり、現在ではこちらが過半数となっている。
もう一つ、このYelpの調査報告で注目したいのが業種別の一時休業と閉店の比率だ。それぞれの小売とサービス業の全閉鎖数に対し、一時休業の割合の方が大きかったのだが、唯一レストランのカテゴリーのみは60%が閉店に追い込まれている。ロックダウン下ではテークアウトかデリバリー対応しかできず、仮に店内営業ができても行政指導に従って入店人数の制限を受けるため、他の業態に比べて店舗維持が難しいことが分かる。
仮にだが、新型コロナウイルスの脅威が全て去り、人々が従来の生活へと戻ろうとして行動を始めたとしても、すでに生活を支えていた店舗はそこになく、新しい生活を受け入れざるを得ない状態になっている。
ここで示されているのは7月10日までのデータなので、集計がスタートしている3月10日からわずか4カ月目の話でしかない。つまり、これが半年や1年、長期化しただけで永久閉店へと続く店舗はさらに増えることが見込まれる。消えた店舗が元の水準に回復するにはおそらくかなり長い年月を要するはずだ。
もう一つ興味深い話題を紹介しよう。米国において感謝祭(11月第4木曜日)翌日に小売各社が実施しているブラックフライデーセールについて、今年のホリデーシーズンは多くの小売チェーンが店舗を閉鎖すると予告している。報道によれば、Best Buy、Kohl's、Walmart、Targetといった大手の名前が挙がっているが、おそらく百貨店や大規模店舗系を中心に多くが追随すると思われる。
ブラックフライデーにはセールを目当てに詰めかけた客で店舗がごった返す様子が連日のように報じられるのが恒例行事となっており、近年では10年前や20年前ほどの賑わいはないものの、ホリデーシーズンの風物詩として定着している。一方で、セール目当ての人々の密集は新型コロナウイルス感染を助長する行為でもあり、現在の状況下では好ましいとはいえない。各社の対応はそのための予防措置だと考えられる。
先日、富士通がオフィスを半減させてテレワーク全面導入を表明したことが話題になったが、経済活動の一端を担っていた「通勤客」の流れが変化しつつある。
家からテレワークで作業をする「WFH」(Work From Home)の形態のほか、コワーキングスペースなどを借りて一時的な作業場としたりなど新しい働き方が広まり、必ずしも毎日同じ通勤ルートを抜けて出社する必要性は次第に低下しつつあるように思える。
仮に緊急事態宣言の緩和を受けてテレワークから揺り戻しが起きたとしても、全てリモートからデジタルで作業することが可能になり、そこで起こる各種問題を解決する知見がたまっていけば、自然に通勤そのものの必要性は落ちていくと筆者は考える。
これが引き起こすのは、それまでオフィスへの通勤客を目当てにしていた飲食や小売業者の売上減少だ。特にオフィスが密集する都市部ほどその影響は大きい。実際、オフィス周辺のコンビニの売上が減少したり、外食全般の売上が顕著に落ち込んだりと、目に見える形ですでに現れている。
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