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飲食店はオフィス転用、小売店はショールーム化? アフターコロナを生き抜くビジネスモデル(3/4 ページ)

» 2020年08月28日 12時00分 公開

コロナを機に大胆な事業整理を

 今後1〜2年で新しい生活スタイルが定着することを見据えた対応を行う必要性とともに、今後「人が実際に会う、現場に出向く価値」がさらに大きくなると訴えるのは、ナレッジ・マーチャントワークス代表取締役の染谷剛史社長だ。同社は小売や飲食、サービス業向けの業務改善やITツールによる問題解決を提案しており、染谷氏はその過程でさまざまな業界トレンドを追いかけている。

ナレッジ・マーチャントワークス代表取締役の染谷剛史社長

 同氏へのインタビューを行ったのは今年5月だが、「早ければ6月にも運転資金が尽きる企業が出てくる」と予告しており、実際に閉店や規模縮小を発表した話もこの時期に散見された。一方で染谷氏は「今までは株主や競合からの圧力で無理して維持していたような店舗が、新型コロナ以降はそうした圧力も弱まり、結果としてこれを機に店舗整理へと向かっているケースもある」と、この春に大量閉店を発表した各社の裏の意図も指摘している。つまり、この時期に大胆なリストラを発表した企業こそ、逆に将来を見据えた業務改革を率先して進めているという見方もできる。

飲食チェーンは「セントラルキッチン方式」に活路か

 この状況だけを見ると、特に飲食業にとっては厳しい将来像しか見えてこないが、これをチャンスとばかりに反転攻勢に出る企業もある。WIRED CAFEを運営するカフェ・カンパニーなどの純粋持株会社であるGYRO HOLDINGSだ。

 染谷氏は同社との対談の中で「都心部は最終的に7〜8割までしか売上は回復しない」「デリバリーでは一切利益は出ず、あくまで一過性のもの」との見通しを示す。

 店舗の賃料と人件費が重石となる飲食業にとって、規模縮小あるいはさらなる効率化は避けられない。仮に店舗を開けても時短営業で席の回転率が落ちるため、売上は減少の一途をたどる。

 そのため、コロナ禍での飲食店が取るべき戦略としては、セントラルキッチン方式など調理場を持たない形態でコンパクトに出店し、EC経由でも販売を行うなど、販売チャネルの拡大を目指す方法が考えられるという。また効率化も重要で、通常であればチェーン店舗運営でスーパーバイザーが管理する店舗数は7〜8軒くらいが一般的なところを、WIRED CAFEの運営では50店舗程度をカバーしているという。

 特に飲食業においては、コロナ禍を機に積極的なM&Aを繰り返し、一気に拡大を目指すチェーンが出てくる可能性がある。「底力のある企業にとっては、20〜30店舗程度を抱える飲食チェーンを買収・合併して企業規模を拡大するチャンスでもある」と染谷氏は指摘する。

リアル店舗も依然として重要 サブスクでオフィス転用案も

 もう一つは、効率を重視した店舗形態や人員配置であっても「顧客との“タッチポイント”としての店舗」は依然重要で、店舗をコミュニティー化しつつ、リピートを増やしロイヤリティーを提供していくのが望ましいとする。

 課題となるのは時間で人が入れ替わるシフトワーカーの扱いで、現状は顧客提供価値を均質化するよう維持するだけでも大変な状況だ。そこで染谷氏はITツールでシフトワーカー同士のつながりを強化し、チームや情報力の底上げすることを提案する。

 客足が遠のく時間帯の店舗の活用方法について、特に苦戦がみられる居酒屋などの業態については、ランチと夜間営業の間のデッドタイムを生かし、前述のようなオフィス整理であふれたビジネスマンを吸収する受け皿として機能できないかとも染谷氏は提案する。「賃料が重石になっているにもかかわらず、忙しい時間帯以外の店舗空間が有効活用されているとは言いがたい状況だ。サブスクリプション方式でオフィス空間を縮小した企業に貸し出して安定収入にするなど、使い方はいろいろ考えられる」(染谷氏)

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