ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >
速報
» 2020年08月30日 07時16分 公開

イーロン・マスクのNeuralink、脳埋め込みチップのブタでのデモで進捗報告

イーロン・マスク氏のBMI(脳マシンインタフェース)企業Neuralinkがプロジェクトの進捗報告イベントを開催。頭蓋骨にはめる直径23mmのチップ「LINK」と移植手術ロボットを披露し、LINKを埋め込んだブタによるデモを行った。

[佐藤由紀子,ITmedia]

 イーロン・マスク氏が2016年に創業した米Neuralinkは8月28日(米国時間)、昨年披露したBMI(Brain Machine Interface:脳マシンインタフェース)デバイスの進捗状況を、カリフォルニア州フレモントの本社キャンパスで開催したメディア向けイベントで説明した。

 昨年披露したチップより大幅に改良された「LINK VO.9」(以下「LINK」)、LINKを脳に移植するための外科用ロボット、既にLINKを埋め込んだブタによるデモが披露された。

 link 1 昨年発表のデバイス(左)より大幅に改良されたLINK(右)

 BMIは、大脳皮質に微細な電極を埋め込み、神経細胞の活動電位を直接読み出し、外部に情報として伝えるデバイス。Neuralinkは、まず脳の障害などで意思伝達が難しい人に向け、考えるだけでコンピューターに直接文字を入力できるシステムの開発を目指している。

 LINKのサイズは直径23mmで厚さ8mm。1024の電極とASICを搭載する。頭蓋骨の表面に後述の外科ロボットで埋め込む。無線で外部端末と接続できる距離は5〜10m。

 link 2 LINK

 バッテリー駆動で、持続時間は“1日中”で一晩でフル充電できる。専用の無線充電器で「スマートフォンと同じように充電できる」とマスク氏は説明した。

 link 3 専用の無線充電器

 インプラント用の外科用ロボットには脳をスキャンするカメラとセンサーもあり、患者が頭部を入れて固定すれば「1時間足らずで無痛でインプラントでき、入院の必要もない」という。ロボットは頭蓋骨の一部を切り取って5ミクロンのワイヤーの束を血管を回避しつつ脳に埋め込む。切り取った穴にLINKがすっぽりはまるので、術後は外から分からないようになる。

 link 4 外科ロボット(左)を披露するイーロン・マスク氏

 イベントでは、2カ月前にLINKのプロトタイプを移植したというブタ「ガートルード」によるデモも行われた。これはBCIではなく、ニューロンの活動を送信するものだ。ガートルードのケージの後ろに設置されたディスプレイに、彼女のLINKから受信する信号が表示された。ガートルードが鼻(ブタは鼻から様々な情報を得る)で何かに触れるとニューロンが活性化する様子が視覚的に分かった。

 link 5 LINK移植済みのブタ「ガートルード」(左上)とそのニューロン活動の表示

 LINKは、7月に米食品医薬品局(FDA)のBreakthrough Devices Programの認定を受けた。Breakthrough Devicesとは、命に関わる疾患や状態の効果的な治療または診断を提供する医療端末およびそのシステムを指す。人間への移植準備はほぼできており、安全性のテストを重ねて許可を待っている状態。マスク氏は昨年、2020年中には人間へのインプラントを計画していると語っていた。

 マスク氏はイベントのQ&Aで、発売時にはかなり高額になるだろうが、将来的には外科手術も含めて数千ドルでできるようにしたいと語った。同氏は以前から、「レーシックのように手軽」にしたいと語っていた。

 同氏は、将来的にはこのシステムで記憶喪失、脳卒中、中毒症状など、神経疾患のあらゆる解決に役立てたいと語った。また、ユーザーの健康状態を監視し、例えば心臓発作を起こしたら警告を発するようにもできるとした。

 マスク氏はこうした取り組みを実現させるため、ロボット工学や電気工学などの人材を求めていると語った。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.