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Amazonの“転売ヤー”をブラックリスト化するツール、開発者に経緯や狙いを聞いた(2/2 ページ)

» 2020年09月24日 16時56分 公開
[樋口隆充ITmedia]
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 反響の大きさから「最初はリプライ自体を消してしまおうかとも考えた」という秀さん。だが「親族が転売業者による買い占めで一時期、マスクを購入できなかったことや、親友が限定プラモデルを買い占められたことを思い出していると、だんだんと転売業者にイライラしてきた」という。

 「今年2月にマスクの転売業者と知らずに『ECサイト上のマスクの入荷情報を通知するツールを開発してほしい』と頼まれ、転売行為に加担しかけたこともある。結局、取引は決裂したが、この時の怒りも動機の一つだった」と秀さんは振り返る。

 だが、ネット上での支持は広がっているものの、ツールには課題も残されている。秀さんは「ログインした状態でリストを作成し、Twitterで公開した際、悪意のある利用者による個人情報が流出する可能性がゼロとは言えない。リスト作成時はAmazonのマイアカウントからログアウトした状態で作成したほうが、より安全だ」と明かす。

 運用面にも課題があり、どの出品者が悪徳かの判断は、個々のユーザーの判断に委ねているのが現状だ。改善に向け、現在は「(客観性を担保するために)Web魚拓へのリンクや、高額出品をしていた際の画像なども合わせて表示する仕組みも検討している」という。

 こうした課題はあるが、秀さんは「転売業者にむしゃくしゃしていたので、ツールを公開したことには後悔していない。一定のプラットフォームを作れた」と手応えを示す。今後は仕組みの改善に加えて、新しいツールの開発も進める考えだ。

 Amazon側も対応に動いていることから、PS5の高額出品者はAmazonマーケットプレイスから減っている。しかし、中には商品を通常の価格で販売しつつ、送料を隠し、購入後に高額の送料を請求する業者も出てきている。秀さんはそうした業者への対策ツールも作成済みだ。

 「Amazon側が対策を何もしないまま悪徳業者を放置していることもある。自分のような外部のエンジニアがツールを開発することで、対策に向けた問題提起にしたい」

 とはいえ、今後も長期にわたって開発や改良に取り組むかは分からないという。秀さんは「自分は飽きっぽいので、自由に活用してもらい、より良いツールを作ってほしい」とし、取材した記者にもソースコードを提供してくれた。

 秀さんは「多くの人に利用してもらい、最終的には誰かにこのプログラムを引き継いでほしい」と話している。

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