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ワークアウト初心者に「Apple Watch SE」を勧める理由

» 2020年09月28日 11時00分 公開
[山本敦ITmedia]

 Appleが9月18日に発表した新しいApple Watch。初めてラインアップを2つに分け、従来製品の進化形といえる「Apple Watch Series 6」(以下、 Series 6)の他、低価格モデルとして「Apple Watch SE」(以下、SE)を用意した。実際に触れてみて、機能面に差はあるものの、用途によってはSEでも十分だと分かった。

Apple Watch SE(写真=左)とApple Watch Series 6(写真=右)

 Series 6とSEは、どちらもGPSのみとセルラー通信(4G LTE)機能付きのモデルがあり、ケース(腕時計本体)のサイズは44mmと40mmから選べる。Retinaディスプレイの解像度は40mmケースで324×394ピクセル、44ケースは368×448ピクセルとやはり共通だ。

 Series 6はケースの素材やカラーバリエーションが豊富。アルミニウム、ステンレススチール、チタニウムのケースが選択できてカラーバリエーションは10種。一方のSEはアルミニウムのみで、カラーバリエーションは3つ。やはり高級機のほうが選択肢は多い。

 両者を40mmアルミニウムケースのGPSモデルに統一して価格を比較するとSeries 6は4万2800円、SEは2万9800円とSEの方が1万3000円ほど安く購入できる。この価格帯では大きな違いだ。

Series 6の購入をためらう2つの“準備中”

 機能面では、常時表示のRetinaディスプレイ、体に取り込まれた酸素のレベルをチェックできるセンサーとアプリ、そして電気心拍センサーを持つのはSeries 6だけとなっている。しかし、このうち2つは今の時点でどれだけ活用できるか微妙だ。

Series 6が搭載する電気心拍センサーによる心電図、不規則な心拍を検知して通知する機能はまだ日本では利用できない

 例えば電気心拍センサーには、ユーザーの心電図を表示したり、不規則な心拍を検知して通知したりする機能がある。米国など一部の国々ではSeries 4から利用できたが、日本で使うには医療機器としての承認・認証を受けなければならない。

 9月上旬にApple Watchの心電計プログラムが認証を取得したという複数の報道はあったものの、Series 6発売後も機能がアクティブになる様子がない。準備を進めている段階と思うが、今のところSeries 6の価値を際立たせる機能になっていないことは確かだ。

 またSeries 6の新機能である「血中酸素ウェルネス」アプリも十分に活用できる環境が整っているとはいえない。血中酸素ウェルネスは、ユーザーの体に取り込まれている酸素のレベルを測定し、値をパーセンテージで知らせてくれるが、データの内容にスコアを付けたり、ウェルネス・フィットネス習慣を手引きしてくれるコーチング機能はない。ヘルスケアアプリに保存されたデータを読み出し、より直感的にデータの意味が把握できるアプリやサービスの登場に期待、という段階だ。

Series 6の新機能である「血中酸素ウェルネス」は、ユーザーの体に取り込まれている酸素のレベルを数値化する

「Apple Fitness+」で広がるユーザーのすそ野

 コロナ禍の影響で自宅で過ごす時間が長くなったためか、任天堂の「リングフィットアドベンチャー」など室内で体を動かせるフィットネス用のデジタルデバイスが注目を集めている。もし、そのような目的で新しいApple Watchの購入を考えているのなら、Apple Watch SEは十分にその役目を果たせるだろう。活動量計としての機能はこれまでのApple Watchと同等で、アプリもそろっている。本体は50m耐水性能を備え、雨や汗にも強い。

 ただ、せっかくApple Watchを購入してもトレーニングが続かないという人は多い。とくに室内で孤独に実践するワークアウトはお手本がないと最初の一歩を踏み出しづらく、モチベーションも続きにくい。それをゲームという形でうまく処理したのがリングフィットアドベンチャーだった。

 筆者の場合、モチベーションが続かないという人にはサードパーティーのサービスを紹介するのが常だったが、今後は少し方針を変えるかもしれない。米Appleがサブスクリプション型動画配信サービス「Apple Fitness+」を発表したからだ。

iPhoneやiPadの画面で動画を見ながらワークアウトを実践できるFitness+。Apple Watchが取得しているアクティビティ情報も画面に同期しながら表示する

 Apple Fitness+は、ダンスやヨガ、コアトレーニングなどApple Watchで利用できるワークアウトのコーチング動画を提供する。一般的なフィットネス動画と異なるのは、Apple Watchと連携すること。Apple Watchから取り込んだ心拍数などの測定値を動画と並べ、動画内でトレーナーが心拍数をチェックするように勧めたり、トレーナーがカウントダウンを始めると画面に数字を表示したりする。履歴から次のワークアウトを提案する機能もある。

 Apple Fitness+は、月額9.99ドル(約1000円)で北米や欧州の6カ国で年内にスタートする。日本での展開は未定だが、もし始まればApple Watch SEと組み合わせてワークアウト初心者向きのセットができそうだ。Series 6との差額で1年以上も試すことができて、機能面に大きな差はない。そして1年もあれば、きっと自分に合ったワークアウトが見つかると思う。

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