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5G目当てにiPhone 12を買うのはアリ? 5Gは今どこで使える? 国内事情を徹底チェック(2/2 ページ)

» 2020年10月14日 20時15分 公開
[石井徹ITmedia]
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5Gを探しに街に出てみる

 どこでも使えるモバイル通信の趣旨からして「出向いてみる」という行為自体が筋の通らないようにも思えるが、筆者の住む郊外にはほとんどエリアがないため、5Gをつかむには電車に乗って東京都心に出る必要がある。

photo スマホ好きならウキウキする? 「5G」ピクトの表示。この後スピードテストをして4Gの速度でガッカリするまでがワンセット

 今回は5G対応のAndroidスマホを片手に、KDDIとソフトバンクの5Gエリアを確かめてみた。場所は両社がエリアを展開する、東京・銀座だ。KDDIでは新橋駅前でも検証を行った。

 半日かけて銀座の街を歩いた結果は、ソフトバンクで1カ所、100Mbps超の通信が確認できたのみだった。ソフトバンクはビルの上から5Gの基地局を展開しているようで、確認できた地点では、交差点周辺の特定の半径20mほどの範囲で確実な通信が可能だった。ソフトバンクの場合、銀座のいくつかの場所で5Gピクトが表示されるものの、データ通信を行った瞬間に4G(LTE)表示に戻ってしまい、実効的な速度は確保されないというケースが多かった。

 KDDIは銀座四丁目交差点、和光や銀座三越が立ち並ぶ一番の目抜き通りで5Gにつながった。ただし、速度は4G(LTE)スマホより心持ち速い程度で、下り100Mbpsに達することもなかった。実際に5Gで通信できていたのかは疑問が残る。

 KDDIは新橋駅前のSL広場でも検証を行っている。そこでは5Gらしい高速通信が可能で、500Mbpsという固定回線並みの速度を確認した。エリアもSL広場全体と隣接するニュー新橋ビル周辺までは広がっており、歩きながら通信しても安定している。

photo 世界には5Gで高速通信できる場所が存在するのだ……と思い知った瞬間

 約2日の短い検証ではあるが、安定した5G通信による高速通信が確認できたのはこの程度だった。「5Gでいつでもどこでも高速通信が使い放題。動画ストリーミングもゲームもVRもスマホで楽しめる」という夢のような世界観は、今のところごくごく限られたスポットでしか実現していない。

じゃあ5G iPhoneはスルーが正解?→そんなことはない

 ここまで読んだ方なら、理解できたことだろう。「5Gで実現するバラ色の未来」は未来であって、今ではない。今の5Gが実現したのは、ポケモンGOよろしく5Gスポットに詣でて、スマホをもって数m単位でうろうろして位置を調整し、5Gのピクトが表示されたら喜ぶ、といったところが関の山だ。

 それなら「5Gに対応したiPhone 12は見送った方が良いの? 」と思うかもしれない。筆者としては、そうは思わない。筆者がいいたいのはあくまで、「5G対応」を現時点でスマホを選ぶ判断基準に入れなくてもいい、ということだ。5GにつながるiPhoneは、4G(LTE)にももちろんつながる。4G(LTE)では3キャリアにおいて、全国の広いエリアで高速な通信が可能だ。

 そして大手3キャリアは5Gスマートフォン向け料金プランについて、4G(LTE)との差額をなくしている。5Gプランの差額を割り引く料金は、キャリアによっては期間限定のキャンペーンという体裁が取られているが、5Gエリアの展開が思わしくなければ長期間続くことになるだろう。

photo 007のテーマに乗せてマトリョーシカなスーツケースから登場したiPhone 12 mini。5Gスマホの小型機は相当レアな存在だ

 料金プランにも差がないのだとしたら、欲しかったら買う、欲しくなければ買わない、という判断で良いのではないだろうか。最新のiPhoneは5G通信以外に高い処理能力を発揮するだろう。特に「iPhone 12 mini」は、5G対応といっても小さく軽く、小型のiPhoneを求める旧SE派のお眼鏡にかなう製品かもしれない。「5Gスマホだから」と選ぶ意味は残念ながら今のところ薄いが、5Gスマホだから避けるという必要もない。

2021年末には全国都市部で展開予定

 5Gエリアについて今後の展開について、キャリア各社の公表している内容をまとめてみよう。2020年夏の決算会見での発言内容などを元にしている。

 まず、NTTドコモは21年3月までに、全国500都市に5Gエリアを展開する見通しを示している。その中には、全ての政令指定都市が含まれる。

 KDDIは21年3月末に全国で約1万の5G基地局を展開し、22年3月末までに5万局規模に拡大する計画を進めている。ソフトバンクも同様に21年3月末時点で1万局、22年3月末に5万局の展開を目指している。

photo 4G(LTE)への切り替えも早かったKDDIは、すでに完全5G化に向けて先手を打っている。まずはスマホを全機種5G対応のモデルにそろえる。5Gスマホの機種数は4キャリア最多だが、大画面スマホが多い

 ただし、KDDIとソフトバンクの場合、既存の4G(LTE)向けの周波数帯を5Gでも同時に展開する技術「DSS」(ダイナミックスペクトラムシェアリング)の利用を前提としている。この技術によって全国を一気に5Gエリア化できるが、もともと4G LTE向けに割り当てられた周波数帯のため、高速化にも限度がある。ピクト上で5Gと表示されていても、それがすなわち高速通信を意味するわけではないため、期待しすぎない方が良いだろう。

 楽天モバイルは4G(LTE)の基地局展開と同時に、5Gのエリア展開を進めていくことになる。同社は21年3月までに全都道府県で5Gサービスをスタートする予定だ。5Gの基地局建設の進捗は、他の3キャリアと条件は大きく変わらないが、楽天は4G(LTE)の基地局展開も同時に進めていく必要がある。楽天モバイルのネットワーク設備は当初から5G展開を見据えたものとしているが、5G用のアンテナを各地に設置し、制御する面においての困難さは他社と変わらないだろう。ちなみに、楽天モバイルは米Appleが公表したiPhone 12シリーズの取り扱いキャリアには含まれていない。

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