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iPhone 12、Pixel 5発売で改めて考える「5G」「ミリ波」とは何か(1/3 ページ)

» 2020年10月30日 08時45分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

 iPhone 12が発売になり、その前にはGoogleのPixel 4 (5G) 、Pixel 5が発売になったこともあり、改めて5Gに注目が集まっている。

iPhone 12 miniは「世界で最も小さく、薄く、軽い、5Gスマートフォン」をうたう

 特に話題になることが多いのが、iPhone 12において、アメリカ版ではサポートしたにもかかわらず、日本を含む他国ではサポートしなかった「ミリ波」の存在だ。

 日本のiPhone 12でミリ波がサポートされていなかったことから、「日本版iPhoneは偽物の5Gだ」という極論まで聞こえてくる。

 もちろん実際には、そうではない。現実問題として、今年発売されるスマートフォンのほとんどは、まだミリ波に対応していない。「今年(2020年)発売される5Gスマートフォンの場合、ミリ波対応が必須というわけではない」と筆者は考えている。

 今回は改めて、ミリ波の事情から「5Gとは何なのか」を考えてみたい。

この記事について

この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2020年10月26日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから

4Gと5Gの違いは「周波数帯」活用の考え方

 まず、現状の5G規格とはどういうものかを振り返っておこう。

 言うまでもなく携帯電話の通信規格なのだが、3G・4Gとの大きな違いが2つある。

 1つは、高周波帯域を活用する、ということだ。

 電波は「公衆材」「不動産」に例えられることが多い。周波数ごとに用途や使う企業・団体が定められているが、その様子は公有地の区画割のようだ。一般論として、周波数が低いほど遠くまで飛び、建物や地形を回り込みやすく、周波数が高いと性質が光に近くなり、直進性が高くなる。また、周波数が高いほど伝送容量(通信路の中で伝えられる情報の量)が多くなる。

 4Gまでは、比較的低い(700MHz〜900MHz)電波も使っているので、広く・あまねく通信が届く。一方で、周波数帯が低いため、伝送容量は多くない。

 速度を上げるため、結果的に、低い周波数帯から順に割り当てて使っていき、複数の周波数帯の通信を組み合わせることで速度を高めている。いわゆる「キャリアアグリゲーション」(CA)がこれだ。

 高周波帯は直進性の高さと減衰性の高さから、利用が限定的だった。4GでCAの利用を前提に高い周波数が使われていく一方で、「もっと高い、まだあまり使われていない周波数帯を活用しよう」ということになる。電波を土地に例えるなら、高周波帯は「ちょっと使いにくいし駅前からは離れているけれど、大規模開発が可能な場所」のようなものだ。帯域が空いている分、幅広い帯域を使って通信することが可能になる。幅広い帯域が割り当てられていれば、より多くの人が同時に使っても速度は落ちづらい。

 というわけで5Gでは、まず高い周波数帯を使うことが前提となった。

 具体的には、3.6GHzから6GHzまでと、30GHzから300GHz帯の2つの領域だ。前者を6GHz帯以下ということで「Sub 6」、後者を波長が1cmから1mmであることから「ミリ波」(英語ではmmWave)と呼ぶ。厳密には、現在日本で5Gが使うミリ波は27〜30GHzなのだが、まあそこはそういうもの、と理解していただきたい。ちなみに、6GHzまでを「FR1」、24.25GHzから52.6GHzまでを「FR2」と呼ぶこともある。

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