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iPhone 12、Pixel 5発売で改めて考える「5G」「ミリ波」とは何か(3/3 ページ)

» 2020年10月30日 08時45分 公開
[西田宗千佳ITmedia]
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「ミリ波は未来」だが「今」ではない

 ではミリ波はどうなるのか?

 もちろん、スポット的な利用は進むだろう。スタジアムや駅などでの利用に加え、現在はWi-Fiでオフロードしているカフェなどをミリ波でカバー……という発想もあるだろう。ただこちらは、効率の良いWi-Fi 6とどちらで置き換えるべきか、という議論はある。

 もちろん、各所での動作検証と低コスト化が進めば、スマートフォンやPCにSub 6とミリ波が両方搭載される未来がやってくるだろう。今の「Sub 6だけの5Gスマホ」が一時的な存在なのは間違いないのだが、当面「ミリ波がないからものすごく苦労する」か、というとそんなこともない。筆者の予想では、「2年くらいはミリ波がなくても困らない」のではないかと思っている。

 スマートフォンを4年使うなら、今、ミリ波のないスマホを買うべきではない。だが、今からミリ波のことを考えている人は、同じ機種を4年使うことは少ないのではないか。2年後に、消費電力が下がって使いやすくなった5Gスマートフォンに改めて買い換えるときにミリ波対応をでもいいのではと思う。

 一方、ミリ波については、活用の可能性が高いといわれているのが、「FWA」(Fixed Wireless Access)と呼ばれる固定回線代わりの利用だ。

 例えばVerizonは携帯電話だけでなく、まさにFWAとして、電柱から家の中へ「ブロードバンド回線として5Gを引き込む」サービスも提供しており、ここでは「窓にミリ波の受信端末をつける」ことで、家の中へ電波が入りづらいことへの対策を講じている。

 FWAはエリア展開の計算も、携帯電話での利用に比べて容易だ。そのためこちらでの利用に期待をかけている事業者もいる。特にケーブルTV局は、携帯電話事業者の5Gでなく、局所的に免許を取得して5Gを利用する「ローカル5G」を使い、このFWAでのアクセス網整備を検討している。今でいう、家庭用モバイルルーター向けに5Gを……という話はもっと出てくるだろう。そちらではミリ波の話は重要になりそうだ。ただ、こちらも今日明日の話ではなく、まだ1年・2年という単位での時間が必要だ。

 5Gにおいて、より帯域を伸ばしていくにはミリ波の領域を広げていくしかない。それこそ、300GHzまではまだまだ「空き地」がある。だが、その空き地を使うのはもっと先の話だ。ミリ波は「とても可能性が高く、5Gの将来を支えるもの」なのだが、今日の話ではないし、来年の話でもない。「今年発売される5Gスマートフォンの場合、ミリ波対応が必須というわけではない」と筆者が考えるのは、そんな事情があるからだ。

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