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棒を揺らした時の「柔らかさ」「硬さ」を再現 KAIST「ElaStick」開発Innovative Tech

» 2020年11月04日 13時06分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 韓国科学技術院(KAIST)の研究チームが開発した「ElaStick」は、バーチャルオブジェクトの揺れを再現する触覚ハンドヘルドデバイスだ。バーチャルオブジェクトを揺らした際の柔らかさや硬さをシミュレートし、長さや太さを再現する。

photo ElaStickを使用した際の動き

 感覚を騙(だま)して重さや質量の動き、衝撃といった動的特性を力覚フォードバックでシミュレートするデバイスは数多く研究されてきたが、今回は柔らかい棒、硬い棒を持って使った時のリアルな触覚を再現する。

 棒を振った際の動的な触覚は、物体が曲がり元の状態に戻ることによる応答速度と振動の組み合わせによって知覚される。この力は、運動の強さ、方向、加速度、及び材料の物理的特性(材料のサイズ、形状、剛性)に依存する。

 今回のアプローチは、3重螺旋のような剛体部と周囲のワイヤで異なる弾性特性(材料、形状、サイズ)を持つバーチャルオブジェクトの動的効果をシミュレートする。

 このデバイスは、中心の赤い剛体部と周囲4箇所に整備される弾性の腱、サーボモーター4基、Viveトラッカーなどで構成。それぞれの腱のサイズは20cmで、異なる素材の2本のワイヤ(非弾性フィッシングワイヤと天然ゴムバンド)を直列に接続した長いひもで作られる。ワイヤはスプールに取り付けられ、滑車を介して巻き取り調整される。巻き取る比率を調整することで、ワイヤの張り具合が変化し、柔らかさや硬さを制御する。

photo 本デバイスの構成図

 精度実験では、異なるレベルの硬さや長さ、太さに応じて曲がるオブジェクトを参加者に体験してもらった。結果、参加者の多くは長さや太さの違いを感じ、力覚フィードバックの効果を示した。

 研究チームは応用例として、3つの武器(ホイル、サーベル、エペ)を使ったフェンシング体験、ボウルの中でクリームを混ぜる体験、筋トレ用のパワーツイスターを使う体験の3つのアプリケーションを作成した。

photo 異なる武器でフェンシングを体験する様子
photo クリームを混ぜる様子(左)パワーツイスターを体験する様子(右)

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