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半沢直樹は東京中央銀行にAIを導入できるか? 技術導入の責任論を考えるマスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(4/5 ページ)

» 2020年11月13日 16時00分 公開

 10月1日に発生したシステム障害で丸一日取引をストップすることに。これを受けて同社が当日夕方に行った記者会見が注目を集めました。

 昨今における金融業のトラブルといえば、ドコモ口座と地方銀行の連携や、7pay(セブンペイ)などが悪い意味で注目されました。遡れば仮想通貨の流出、証券会社の発注ミスやシステムダウン、みずほ銀行の大規模システム障害、日本IBMとスルガ銀行における裁判などもあります。

 こうした場面ではシステムを開発するIT企業側の問題が追求される事が多く、金融機関が社名を公表して批判することもありました。

 しかし記者会見において東京証券取引所のCIOは、責任の所在を開発元の富士通ではなく東証であると明言しました。

 その上で、障害発生の経緯や判明している故障の原因、障害発生時における内部での対応など、丸1日取引停止に至った経緯や判断を明確に説明しました。歯切れの悪い回答に終始せず、追求するマスコミ側の質問における問題が際立った記者会見となりました。

 もしも東証がシステム開発側に向けた犯人探しや責任を押し付け合う他責思考であったならば、謝罪と風化による世論の沈静化にとどまり、内々の組織論による処罰と人員交代だけに終わっていたかもしれません。この場合、根本的な解決に至らず、いずれ同じことを繰り返すことになるでしょう。

 そのような考え方をしなかったのは、過去に大規模なシステム障害を経験した東証が、自分たちで積極的に技術を理解しながら、リスクを負ってでも新しいシステムを導入した結果といえます。

 大事なのは感情と責任と組織の体面ではなく、技術の理解によってミスを減らしながら障害発生時に適切に対処することです。デジタル化における判断は半沢直樹に出てくる帝国航空でも同じことがいえます(航空機の安全は失敗からの改善による歴史でもあります)。

 そこにトップによる判断と組織における責任を追う姿勢が問われますが、東証は過去の失敗から組織変革を成し遂げたことでリスクを負ってでも最新技術の理解と導入を進められたのでしょう。併せて利用者側としての責任も明確にすることで、システム開発を担当する富士通のエンジニアとも信頼関係を構築できたのではないでしょうか。

 組織が変わることで、新しい技術を導入して活用できるようになった好例といえるでしょう。逆に感情論や組織論による自己保身ばかりを考えている組織では、AIに限らず技術の活用は進まず、単純作業の置き換えとコスト削減が関の山です。

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