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半沢直樹は東京中央銀行にAIを導入できるか? 技術導入の責任論を考えるマスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(2/5 ページ)

» 2020年11月13日 16時00分 公開

 昨今のテレワーク導入やハンコ廃止にとどまらず、紙書類の削減、通帳の廃止、支店統廃合、週休3日制など、デジタル化に伴ってさまざまな動きがあります。皆さんも銀行窓口の手続きでタブレットを使うなど、実感があるかもしれません。

 デジタル化が進む業務の一つは、一定のルールに基づくアナログな単純作業の自動化です。いわば新人や派遣社員、外注先が担当していた作業は、デジタルに置き換えやすいのです。

 技術の進化で人間と同等かそれ以上の精度を出せるようになっており、将来的には人間よりも低コストになるでしょう。

AIが銀行の経営判断を行う日は来るか

 対して、企業買収(M&A)や人材のマネジメントなど、複雑な条件に基づく意思決定においてAIは人間を補助する役割となります。

 終身雇用と年功序列が前提の日本企業では、入社から数年は単純作業や現場を経験しつつ、異動や転勤を重ねるジョブローテーションを積むのが一般的でした。

 特に銀行という組織では、年功序列、入社後の経歴の他に、派閥や学閥、合併前の所属元なども影響します(半沢直樹でも合併前の所属組織による対立や、銀行と出向先の証券会社における上下関係が描写されています)。

 つまり重大な意思決定を行う組織の長は、経験を積み、人脈を作り、いろいろな仕事を覚えた人間が携わるべきという前提があるのです。

 この、過去を遡って大量のデータを多角的に分析して最適な判断を考える能力は、やはりAIが得意とする分野です。

 仮定の話ですが、もしも複雑な条件に基づいた意思決定において、AIが人間よりも高性能かつ低コストになれば、高い給料の偉い人よりもAIが判断する方がメリットがあることになります。

 しかし銀行における意思決定は年長者・役職者の仕事であり、上の判断と意思決定が正しい前提の元で、部下が行動するのが鉄則です(ドラマでは頭取のために働くのが正しい銀行員とされても、会社の命令ではなく自分の正義に従って行動する半沢直樹に魅了されるのですが)。

 仮にAIによる意思決定が年長者・役職者・経営陣よりも優秀になれば、役職という概念はもちろん、終身雇用や年功序列という組織の大前提が崩れます。そしてAIを導入すべきかの判断を下す側にとって、自分の立場を脅かす存在は不要です。

 また、終身雇用と年功序列の組織で働き続けた年配年員は簡単にリストラできませんし、単純作業をやらせる意味もありません。

 合理的かどうかはさておき、AIが進化しても年長者や上層部をAIに置き換える理由がないのです。

AI導入は組織の効率化?

AIによる意思決定を阻むもう一つの理由

 そして半沢直樹を見れば、AIによる意思決定を拒むもう一つの大きな理由が分かります。

 AIはどれだけ技術が向上しても、精度100%で完全という保証はなく、間違いは避けられません。もしもAIによる意思決定で問題が起こったら、誰がどう責任を取るのでしょう?

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