3000円台で手に入るシングルボードコンピュータ「Raspberry Pi」の性能をフルに生かした、エッジAIプラットフォームを展開しているスタートアップ企業がある。今年で創業5年になるIdein(イデイン、東京都千代田区)だ。「第1回 AI・人工知能EXPO【秋】」(幕張メッセ、10月28〜30日)に出展した同社のブースを取材した。
Ideinのプラットフォーム「Actcast」は、そのコストの圧倒的な安さに特徴がある。初期導入時に特別なデバイスを購入する必要は無く、量販店などで販売されているRaspberry Piに専用のファームウェアを導入すれば、エッジAIデバイスとして動作する。機能は「アプリ」として提供され、料金はアプリごとに日額で払う方式だ。1日30円〜200円といった少額で、必要なものだけを選んで導入できる。
同社が現在提供しているアプリは人の動きを検出するものが中心となっている。例えばカメラを使った画像検出では、広告サイネージを人が注視しているかを検出する機能や、性別・年代を推定する属性分析機能、通った人の数をカウントする機能などがある。小売店や街頭広告などと組み合わせて、マーケティングツールとして利用されるケースが多いという。
同社のコア技術は、Raspberry Piの限られた処理能力をフル活用するソフトウェア技術だ。Raspberry Piは安いモデルなら1000円台から、高性能なものでも8000円程度で販売されている。その性能はスマホと同等か、下回る程度しかない。Ideinではチップに合わせた独自のチューニングを施すことで、顔認識などの負荷が高い機械学習処理をRaspberry Pi内蔵のGPUで動作させている。
同社の小林大悟CFOは「他社でRaspberry Piを使った事例も目にするが、多くはAI処理用に物理的なアクセラレーターを追加している。Raspberry Pi内蔵のGPUでここまで高度なエッジAIを動かして商用サービスを提供している企業はおそらく世界でも類がない」と胸を張る。
Actcastは1月に本格展開を始めたばかりのサービスだが、ユーザー企業からの期待は大きい。すでに70社以上と提携し、大手コンビニやファミリーレストラン、公共の場にあるデジタルサイネージなどでの採用も始まっているという。
Ideinは10月28日、KDDIや双日、伊藤忠テクノソリューションズなど7社から20億円の資金を調達したと発表した。Actcastのプラットフォーム上で動くサービスを拡充させていく段階で、連携企業とともに新サービスの開拓に取り組む。
「連携先の伊藤忠テクノソリューションズは、ActcastのプラットフォームとWebカメラ、サーマルカメラを組み合わせて、来店客の発熱を検知するシステムを展開している。このシステムは、全国のKDDI直営店などに設置されており、感染症対策に一役買っている」(小林氏)
Actcastの対応デバイスも、Raspberry Pi以外の選択肢を拡充させていく方針だ。インテルFPGAのような、より高性能なデバイスへの対応も検討中としている。
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