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» 2020年11月25日 14時34分 公開

Innovative Tech:オンライン飲み会で「お酌」、乾杯も再現する「そそぎそそがせ」 阪大が開発

一緒に飲む相手がそこにいなくても大丈夫。

[山下裕毅,ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 大阪大学による研究チームが開発した「そそぎそそがせ」(PDFへのリンク)は、遠隔で行うオンライン飲み会で、離れている相手とお酌をし合えるVRシステムだ。自分のコップに手酌しているのに、相手にお酌されているような錯覚を引き起こしたり、キャラクターにお酌してもらっている疑似体験もできる。

photo 自分のコップに注いでいるのに、バーチャル上では相手のコップに注ぎ、相手のキャラクターが自分のコップへ注いでいるように感じる

 このような錯覚は、飲み物を注ぐ際に瓶を持った右手を奥行き方向に7〜9cm程度ずらしてバーチャル上で描画することで起こる。この状態で何度も右手を動かすことで、ズレた位置関係が自然に感じられるようになる。この現象を「プリズム順応」と呼び、最初は誤差を感じるが何度も試行すると適応する感覚を得られる。

 この現象を使い、実世界では自分のコップにお酒を注いでいるのにバーチャル上では自分が相手のコップに注ぎ、相手は自分のコップに注いでいるように錯覚する。

photo 実世界でお酌をしている様子(左)バーチャル上でお酌を体験している様子(右)

 実験ではアバター同士で集まるオンライン飲み会を設定した。それぞれにお酌セット(瓶3本の飲み物とコップ)とHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を準備。ディスプレイに表示される相手のアバターは、相手の実際の動きが反映される。

 瓶にはHTC VIVEトラッカーが取り付けられ、位置や傾きを計測。外部カメラでコップにどれくらい液体が注がれたかを捉え、バーチャル上で液面の高さを反映する。

 コップには、HMDを着用したまま飲めるように、コップの飲み口だけが半円分切り取られるように離れる仕組みを導入。磁石により着脱し、注ぐときは引っ付いて、飲む時だけ離れる。これにより、飲む際にコップがHMDに当たらずに済む。

 なお、瓶で注ぐ際はズラしている右手で、コップで飲む際は通常位置の左手で行うため、位置関係の混乱は防止できる。

 コップの着脱は磁石を用いているので、コップを離す際に「カチッ」とした音が鳴る。これがコップ同士を合わせた乾杯の音に似ている。磁石は引き付け合うので、実際の乾杯時のように相手のコップと相互作用している触覚も得られる。体験者の1人は、離しているのに逆に押されている力を感じたと話している。

photo コップには磁石を使った仕掛けを

 今回の手法では、遠隔地に相手がいなくてもキャラクターが存在すれば成立するため、1人飲みやVTuberとのお酌のし合いも可能だ。またリアルアバターを使用することで、より現実に近いオンライン飲み会が可能になるとしている。

 

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