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プロジェクションマッピングで硬いものでも「ぷるんぷるん」 東大「ElaMorph Projection」開発Innovative Tech

» 2020年11月25日 15時57分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 東京大学 石川グループ研究室が開発した「ElaMorph Projection」は、硬い物体であっても、動かすとぷるぷると弾力があるかのように錯覚させられるプロジェクションマッピング技術だ。

photo ElaMorph Projectionのイメージ図。プロジェクタによる投影で、対象物を動かした際に弾力があるかのような揺れを錯覚させる

 近年、素早く動き変形する対象物にぴったりと貼り付いた映像を投影する「ダイナミックプロジェクションマッピング」の研究が盛んに行われている。今回のアプローチはダイナミックプロジェクションマッピングを応用し、硬い対象物の動きに合わせて、弾力があった場合の仮想的な変形情報を投影することで、あたかも弾力があるかのように見せるものだ。

 これまでにもプロジェクションマッピングで物体が変形したかのように錯覚させる手法はあったが、いずれも事前作成のアニメーションを用いていたため、対象物をアドリブで動かした際の運動に正しく対応できない。

 この課題を解決するため、研究チームは対象物を動かした際の変形を高速に物理シミュレーションで計算し、レンダリングした画像を投影する方法を採用した。

 また、プロジェクションマッピングによる錯視であることが観測者にばれないように、物体の輪郭内に投影画像を収める変形修正アルゴリズムを実装。弾ませたい領域や程度を容易に指定できる「弾性マップ」の導入により、対象物の半分だけといった部分的な弾性表現も可能としている。

photo 弾性マップを使用した際の投影結果。最左列の弾性マップにおいて、明るい箇所がぷるぷるになって見える

 本手法は、プロジェクションマッピングにより変形を錯視させる従来研究「変幻灯」の投影モデルを拡張し、3次元物体の変形錯視の品質を高めている。さらに、投影を行いながら環境光の強さと方向をリアルタイムに推定し、これに応じた投影画像の生成を行うため、パーティー会場やコンサートホールなど照明が変化する環境下でも活用できるという。

 実際のシステムでは、投影画像生成に関するこれら全ての計算を2ms以下に収めることで、対象の動きに遅れることなくぴったりと投影し、錯視を起こすことに成功している

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