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au PAYで再び20%還元、au契約者は住宅ローン優遇 KDDIが金融事業で“大盤振る舞い”の狙いは

» 2020年11月30日 15時41分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 KDDIは11月30日、金融事業での顧客獲得に向け、還元キャンペーンや特典の改定などを順次行うと発表した。まずは12月1日から、スマートフォン決済サービス「au PAY」で、購入額の最大20%相当の「Pontaポイント」を付与する(2021年3月まで)。21年3月からはauユーザー限定で、auじぶん銀行が提供する住宅ローンの金利を引き下げる。クレジットカード「au PAY ゴールドカード」の特典も拡充する。

 ソフトバンク系の「PayPay」などが先行する中、ユーザーのメリットを充実させて競争力を高める狙いがあり、KDDIの長野敦史氏(パーソナル事業本部 サービス統括本部 金融決済ビジネス部 部長)は「当社の差別化ポイントは(通信サービスと)金融サービスとの連携であり、これは大きな強みになる」「他社に負けないようなサービスを取りそろえる」と意気込んだ。

photo auフィナンシャルホールディングスの勝木朋彦社長(=左)、KDDIの東海林崇副社長(=右)

マツキヨなどで「Ponta」を最大20%還元

 au PAYでの還元キャンペーンは「たぬきの大恩返し」と銘打ち、マツモトキヨシやほっともっと、オーケーで買い物をしたユーザーに、1回の支払いごとに20%相当のPontaポイントを提供。ららぽーとやパルコなどの百貨店・ショッピングモールでは10%相当を付与する。対象となる店舗は計100万カ所の予定という。

 加えて、19年末に資本・業務提携を結んだローソンの店舗では、21年春に最大20%還元を行うとしている。「ローソン銀行ATM」でau PAYの残高をチャージすると、チャージ額を5%増額するキャンペーンも21年1〜2月に実施する予定だ。

 いずれもauやUQ mobileの契約者だけでなく、他社ユーザーの参加も受け付ける。

photo 還元キャンペーン「たぬきの大恩返し」を行う

 今回の企画を行う背景には、20年2〜3月に行ったau PAYの大規模還元策「誰でも!毎週10億円!もらえるキャンペーン」の成功がある。契約する通信会社を問わず、毎週10億円相当のポイントを還元したことで「au以外のユーザーが大幅に増えた」とKDDIの東海林崇副社長は明かす。

 終了後も利用者は増え続け、au PAYの会員数は10月時点で2450万人を超えた。だがこの数字は、PayPay(ソフトバンク)の3300万人や「d払い」(NTTドコモ)の2999万人と比べると見劣りする(いずれも10月時点)。KDDIはこうした中で、再度の大規模還元によって逆転を目指す。

au契約者は住宅ローン優遇 「他社に負けない最高水準」

 住宅ローンの特典を巡っては、21年3月に新プラン「住宅ローンauモバイル優遇割」をリリース。auじぶん銀行の公式サイトなどから住宅ローンの仮審査を申し込んだ人がauユーザーである場合、変動金利と固定金利(10年)をその時の金利から0.07%引き下げる。合わせて「じぶんでんき優遇割」も提供し、電気サービス「じぶんでんき」の契約者の金利はさらに0.03%引き下げる。

photo au契約者の住宅ローンを優遇する

 ユーザーが2つの割引を併用した場合、年間の金利は0.1%引き下がる。auフィナンシャルホールディングスの勝木朋彦社長は「これまでも低金利でローンを提供してきたが、金融と通信の組み合わせでさらなる引き下げを図る。他社に負けない最高水準の優遇だ」と強調する。

 ただし、ユーザーが途中でauを解約した場合などは、金利は元に戻る。住宅ローンの特典をUQ mobileの契約者などにも拡大するかどうかは「様子を見ながら考える」(KDDIの東海林副社長)としている。

au PAY ゴールドカードの特典も拡充

 au PAY ゴールドカードは年会費1万円(税別)で、決済額などに応じてボーナスポイントを提供している。21年2月以降は特典をさらに拡充し、(1)ECサイト「au PAY マーケット」での決済時に最大17%相当のポイントを還元する、(2)同カードからau PAY残高をチャージした場合はチャージ額の2%を還元する——といったサービスを行う。

 カード利用者がauユーザーである場合は、本人・家族の通信料金や、固定回線の通信料金の11%相当を新たに還元する。

 今後は無料で使える空港のラウンジや、優待価格で利用できるホテルなども増やす予定だ。

photo 「au PAY ゴールドカード」の特典も拡充する

 KDDIの東海林副社長は、これらの施策がもたらす効果について「金融事業での取り扱い高は20年3月に6兆円を突破しており、今年度はそれを倍にしたい」と強気な見方を示した。業績への影響については明言を避けたが、通信事業と非通信事業を連携させる取り組みを今後も加速させるとした。

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