体積の多くが空気で構成され、重量が軽く断熱性も高い素材「エアロゲル」。そのエアロゲルの断熱性をさらに上げたり、体積を最大10倍に増やしたりできる──物質・材料研究機構(NIMS)はこんな研究成果を発表した。NIMSのベンチャー支援制度を使った事業化も今後見込む。
エアロゲル自体は1930年代に開発された素材で、物質の隙間に気体を多く含む。重量の軽さから宇宙開発の材料として利用されてきた他、高い断熱性は建築分野でも注目されている。しかし、物質の製造コストや、一つの塊(モノリス)として作れるサイズの制限などから普及には課題もある。
NIMSの研究者、ウー・ラダーさんが開発に取り組むのは、シリカ製の微小な中空粒子をシリカ製のエアロゲルに含ませた、ハイブリッドのエアロゲルだ。中空に二酸化炭素を入れると、真空断熱パネルに並ぶ断熱性能になるという。ウーさんはハイブリッドエアロゲルを手のひらに乗せ、バーナーであぶるパフォーマンスも見せた。
NIMSではエアロゲルのもう一つの技術として、体積を最大10倍にする手法も開発。ハイブリッドエアロゲルはモノリスとして真空断熱パネルを製造するのに向いており、体積を増やす技術は市販の断熱材料に向くとしている。
ウーさんは、省エネ住宅の建築材料や極低温物質の輸送などに、今回開発したエアロゲルが役立つと見込む。省エネ住宅向けには一般的な断熱材用途の他にも、エアロゲルの赤外線吸収率の高さと光を通す性質から、窓に使うことで太陽の熱を遮断しながら光を取り入れることもできる。極低温物質の輸送としては、液体水素の長距離・長期間輸送のための断熱容器や、新型コロナワクチンを各地域まで届けるための断熱容器などへ応用が可能という。
NIMSのベンチャー支援制度を生かして、ウーさんはこのエアロゲルの量産化に向けた技術構築や工場の建設を進めたいとしている。
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