「半永久的に静電気をためられる」──国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)と産業技術総合研究所が、そんな液状物質を開発した。小さな振動を電気信号に変換できる柔軟な素材として、脈拍・心拍センサーなど生体センサーへの応用が見込めるという。
研究グループが開発した物質は、「ポルフィリン」という有機化合物を、「分岐アルキル鎖」という鎖状の炭水化合物で囲んだもの。ポルフィリンは赤血球が酸素を運ぶのに必要な「ヘモグロビン」と似ていて、静電気を帯びることができる。これを炭水化合物の鎖が囲むと安定した構造になり、静電気を半永久的にためられる常温の不揮発性液体となるという。
半永久的に静電気をためられる物質は、半永久的に磁力を帯びる「磁石」にちなんで「電石」(でんしゃく、エレクトレット)と呼ばれる。エレクトレット材料は振動や圧力などを電気信号に変換できるため、振動発電やセンサーに利用されているが、これまでは固体やフィルム状の素材しかなく、人間の体のような複雑な表面に密着させるのは難しかった。
今回発表した液体エレクトレットに高電圧を掛けて帯電させ、布に染み込ませたものを、ポリウレタンフィルムと銀メッキでできた柔らかい電極で挟んだところ、伸縮や折り曲げができる振動発電素子(振動による圧力変化を電気に変える素子)ができた。「少なくとも1カ月以上は安定に動く」と、NIMSの中西尚志さん(フロンティア分子グループ リーダー)は話す。
折り曲げといった形状変化に柔軟に対応できるため、電池レスの脈拍・心拍センサー、モーションセンサーなど医療への応用が期待できる。振動と電気を変換できる性質から触覚フィードバックへの応用や、IoTデバイスの電源としての開発も進めているという。今後は、材料の加工や改良を進め、より安定性を高めていくとしている。
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