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» 2020年12月28日 07時00分 公開

なぜ「エッジ」に注力? 「OpenShift 4.6」から読み解くレッドハットの狙いとジレンマ

レッドハットが11月末に、コンテナプラットフォームの新バージョン「Red Hat OpenShift 4.6」を発表した。前バージョンから、エッジコンピューティングのサポート機能などを強化した。そこから見えてくる狙いと戦略の課題点を、ITジャーナリストの谷川耕一氏が解説する。

[谷川耕一,ITmedia]

 レッドハットは11月末、コンテナプラットフォーム「Red Hat OpenShift」の新バージョン「Red Hat OpenShift 4.6」(以下「OpenShift 4.6」)を発表するとともに、コンテナ市場におけるビジネス戦略を明らかにした。OpenShift 4.6は前バージョンから、エッジコンピューティングのサポート機能やサーバレス機能を強化しており、顧客企業のコンテナの活用の幅を広げられるという。同社はこの戦略を継続し、OpenShiftエッジコンピューティング関連機能を強化するとしている。

photo Red Hat OpenShift 4.6ではエッジ機能を強化

接続の安定性を強化

 OpenShift 4.6は、エッジ部分を拡張する新機能「リモートWorker Node」を搭載。オンプレミスやクラウドで動くOpenShift環境(=Master Node)と同じ環境をエッジでも再現できるようにした。エッジにあるコンテナを管理するノード(=Worker Node)と、オンプレミスやクラウド上のMaster Nodeでのシームレスな連携を実現し、効率的な運用を可能にするのが特徴だ。

 この仕組みの裏側では、オンプレミスやクラウドとエッジにあるノード間の接続待ち時間を長くしている。これにより、ネットワーク接続が断続的に失われてもノード間の接続性を維持し、不安定な環境でも運用を継続できるようにしている。

 これまでのOpenShiftは、オンプレミスやクラウドにあるコンテナ基盤に、アプリケーションをデプロイ(配置・展開)する使われ方が多かった。その中でエッジコンピューティング向けの機能を強化した背景には、近年のIoTの発展などがある。

 IoTのシステムでは、センサーなどが取得したデータにフィルタリング処理などを施し、クラウドに集めて活用することが一般的だった。だがここ最近は、IoTセンサーなどの近くにエッジコンピュータを配置し、複雑な処理をエッジ側で行うことで、リアルタイムな制御を実現するニーズが増えている。

 実用化が進んでいる5Gとエッジコンピューティングを組み合わせると、より大容量・低遅延での通信が可能になることもあり、レッドハットはここに商機を見いだしている。「エッジの領域は、これから大いに期待できるところです」と、レッドハットの岡下浩明氏(製品統括・事業戦略担当本部長)は意気込む。

photo エッジに特化した機能の詳細

サーバレス機能も拡充

 エッジコンピューティング以外の機能では、 OpenShift 4.6は以前のバージョンからサーバレス機能を充実させ、処理のリクエストがあった時だけアプリケーションが起動する仕組みを実現できるようにした。コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」に最適化したJavaフレームワーク「Quarkus」も追加し、既存のJavaアプリケーションのコンテナ対応も容易にした。

 ただし、レッドハットが今後力を入れていくのは、やはりエッジコンピューティング関連の機能だろう。エッジにおけるOpenShiftの活用はIoTにとどまらず、一般消費者向けアプリケーションなどの機能改善にも役立つ。「(消費行動や利用履歴などの)データをエッジで取得し、クラウドに持っていって処理すれば、その結果を使ってユーザーのエンゲージメントを迅速に改善できます」と岡下氏は言う。

レッドハットの狙いとジレンマとは

 こうしたエッジコンピューティングを組み合わせた使い方こそが、OpenShiftのコンテナ環境の優位性を十分に生かせるといえる。従来のOpenShiftはどちらかといえば、クラウドでの利用を前提としたアプリケーションの開発よりも、既存アプリケーションのコンテナ化のために使われるケースが多かった。

 だが、そうした使い方だけでは、コンテナの価値を十分に発揮できないとレッドハットでは捉えていたのだろう。今回のエッジ領域の強化などによって、コンテナをフル活用するユースケースをより増やすのが同社の狙いであるはずだ。

 ただしレッドハットが提案するような、エッジコンピューティングとOpenShiftを組み合わせた使い方をできる企業は、現時点ではまだ限られる。エッジやサーバレス関連の機能を使いこなせない企業では、せっかくの新機能が宝の持ち腐れとなり、手間とコストをかけたのにOpenShiftの活用メリットが得られない場合もありそうだ。

 エッジコンピューティングとの連携というコンテナ活用の“少し先の世界”を示したレッドハットの戦略が、日本企業にどう理解され、受け入れられるかは分からない。デジタル化に出遅れる企業も多い日本では、あまりに先進的なビジョンを示せば顧客はついて来られない。だが、製品の進化のスピードを落とせば、レッドハットの良さも示せない。

 このジレンマの中でバランスをどうとるべきか。レッドハットにはなかなか難しいかじ取りとなりそうだ。

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