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» 2020年12月30日 08時32分 公開

ウィズコロナ時代のテクノロジー:パンデミックが促す企業の新たな競争力 コロナ禍でも成長するビジネス (1/2)

コロナ禍で企業はどうやって生き残るのか。成功している例を取り上げてみる。

[小林啓倫,ITmedia]

 本格的な冬が到来し、残念ながら日本には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の「第3波」が押し寄せている。加えて英国を始めとした地域で、従来の新型コロナウイルスよりも強い感染力を持つとされる変異種が発見され、さらなる感染拡大のリスクが高まっている。これを受けて日本政府は、12月28日から2021年1月末まで、全ての国と地域からの外国人の新規入国を拒否すると発表した。

 こうした検疫措置のことを、英語で「quarantine」(クアランティン)と呼ぶが、これは数字の「40」を意味するイタリア語が語源となっている。14世紀にヨーロッパでペストが流行した際、ベネチアの政府は外国からやってきた船をすぐに入港させず、沖合の小島に40日間停泊させ、感染者がいないかを確認するという対応を取った。そのため「40」が検疫を意味する言葉として使われるようになったというわけだ。それと同時に、こうした措置の有効性が認識され、その名前と共に検疫が世界に広がったのである。

 私たちが新型コロナウイルスに対抗するために開発、導入した新たな技術や手法も、その中から有効なものが選別され、新たな時代における標準的な行為として普及していくだろう。そうした事態は、想像より早く進むかもしれない。

パンデミックが促すデジタル投資

 例えばサーマルカメラ。都市部で働く人々にとっては、既におなじみの存在になりつつあるが、カメラに写った被写体の表面温度を測定し、数値として表示したり、色で表したり(高熱であれば暖色系で示すなど)してくれるものだ。不特定多数の人々の体温を簡単に測り、発熱している(つまり新型コロナウイルスのような感染症に罹患している可能性のある)人物を特定できるとして、大勢が集まるオフィスや商業施設、イベント会場に導入が進んでいる。最近では画像解析技術と組み合わせ、より正確かつ手軽に映像内にいる人の体温を把握できる製品も登場している。

photo アイリスオーヤマが製造・販売しているAIサーマルカメラ

 以前からこうしたサーマルカメラは空港などに設置され、まさに検疫を目的として使用されていたが、COVID-19対策の一つとして社会に急速に普及しつつある。調査会社の仏Yole Developpementが発表したレポートによれば、サーマルカメラを含むサーマルディテクター(熱検知)アプリケーション市場は、2020年に世界全体で76億ドル(約7870億円)に達し、これは前年比76%もの成長となる。それだけ新型コロナウイルスが世界に蔓延(まんえん)しているわけだが、一方でこの急拡大は、サーマルカメラによるチェックという仕組みを、社会が急速に受け入れていることを示している。

 テクノロジーの普及は通常、一定のパターンに沿って進むとされている。新しい技術をすぐに試してみたい人々、あるいは時代の流行に遅れまいとする人々が初期の利用者となり、周囲で大勢が使うようになってから関心を示す人々、あるいは最後まで従来の在り方を変えようとしない人々が遅れて参加する。さまざまな研究から、こうした人々のタイプの割合はほぼ変わらず、新技術を普及させたい企業は順を追って彼らを攻略していく必要があるといわれている。

 しかしパンデミックという異常事態が、それに関係する技術の普及に拍車を掛けてようだ。英国内での調査となるが、リバプール大学が主要産業の企業を対象に行ったアンケートによれば、対象企業の実に79%が、COVID-19を理由としてデジタル技術への投資を拡大したと回答している。さらに83%の企業が、パンデミックの発生後、組織内のより幅広い業務においてテクノロジーを活用するようになったと答えている。実際に、パンデミック下でよりデジタル技術を使うようになった業務の内訳を見ると、あまり偏りがないことが確認できる(図1参照)

photo 図1. パンデミック下でよりデジタル技術を使うようになった業務(※リモート会議を除く)(英リバプール大学レポートより筆者作成)

 企業も消費者の場合と同様、新技術にいち早く飛びつく組織もあれば、従来の在り方をかたくなに守る組織もある。さらに今回のパンデミックによって、感染拡大防止のための移動や商業活動の制約が行われた結果、多くの企業で業績が悪化している。にもかかわらず、大多数の企業が幅広いデジタル技術の導入を進めているという状況は、COVID-19が過去の疫病と同様に、私たちに新しい技術や生活様式の採用を強く促しているといえるだろう。

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