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地上波進出、ハイエンドキーボードの流行──2020年の自作キーボード振り返りハロー、自作キーボードワールド 第9回(1/2 ページ)

» 2020年12月31日 17時00分 公開
[ぺかそITmedia]

 いろいろなパーツを組み合わせて自分好みの1台を作る「自作キーボード」について紹介する本連載。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、テレワークが急拡大し、働き方が大きく変わるなどこれまでの生活が一変した。同時に今年は自作キーボード、ひいてはキーボード全般においても大きく動く年となった。

 今回はこの一年を、キーボード関連のニュース動画「ほぼ週刊キーボードニュース」を配信してきた筆者の視点で、いくつか印象に残ったトピックを紹介する。

ぺかそ(@Pekaso)

自作キーボード「Fortitude60」作者。自作キーボードの基本から設計方法までまとめた同人誌「BUILD YOUR OWN KEYBOARDs」を執筆。

連載:「ハロー、自作キーボードワールド」

自作キーボードの作者であり、キーボード関連のニュース動画「ほぼ週刊キーボードニュース」を配信するぺかそとびあっこが、自作キーボードの世界の“入り口”を紹介していく。


「マツコの知らない世界」がキーボードをピックアップ

 今年一番盛り上がったニュースは、やはりTBSテレビの番組「マツコの知らない世界」で「キーボードの世界」が紹介されたことだろう。ゲストとして筆者自身が出演したため個人的な思い入れもあるが、テレビという媒体を通じて多くの人々に奥深いキーボードの世界、ひいては自作キーボードの存在を周知できた出来事だった。

 せっかくなので、同番組でキーボードの紹介に至るまでの流れを紹介したい。出演に関しては5月頭ごろに番組側から話を受けたが、当時は緊急事態宣言下だったこともあり、収録のめどが不透明だった。6月から本格的に準備が始まり、番組で紹介するキーボードの選定や話の組み立てを慎重に行った(実際には台本は無く、マツコ・デラックスさんの興味の赴くままに進むのだが)。

 そして収録を行い、7月中旬に晴れて放映に。短い時間でマツコさんにキーボードの世界をプレゼンするのはとても難易度の高い試みだったが、キーボードを提供していただいた多くの企業や、コミュニティーの方々にご協力をいただいたおかげで、無事に終わることができた。

 同時に、世間一般へのテレビの影響はやはり大きいと感じた。番組に対する反響をTwitterなどで見ると、「そもそもキーボードを別に買うという認識がなかった」「きれいな『アルチザンキーキャップ』に興味が出た」など、さまざまな反応があった。番組でも紹介した高級キーボード「HHKB」を手掛けるPFUによると、偶然にも番組放映直後にセールが重なったこともあってか、例年に比べて5倍の売上があったという。

 「番組を通じて自作キーボードを始めた」といううれしい声も聞こえ、より多くの人々にキーボードの“沼”の深さを知っていただけたように感じた。

「ハイエンドカスタムキーボード」人気の加速

自作キーボードとカスタムキーボードに明確な基準は無いが、中でも4万円あたりを超えてくるような高価なモデルがハイエンドカスタムキーボードとされる。ケースが金属削り出しなど、素材や加工にこだわったものが多い

 キットとして日本国内に流通する自作キーボードは、左右分離型などの独特な配列である他、はんだ付けを必須とする電子工作キット的なものが多い。一方、同じく組み立てを必要とするが、「MacBook」シリーズのような金属削り出しのケースを使ったり、打鍵感を追求して内部構造にこだわったりする、いわゆる「カスタムキーボード」のハイエンドモデルも2020年に入ってよく見掛けるようになった。

 価格はおよそ4万円からで、中には10万円近くするものもある。しかし、見た目に高級感があるだけでなく、内部に吸音材などを仕込んで打ち心地を追求したものとあって、市販品を超えた打鍵感/音を求めるユーザーから人気を集めている。

 ハイエンドカスタムキーボードの人気は海外が中心で、その人気が拡大して日本にも波及してきた印象だ。それを印象付ける出来事として、数百〜数千台の在庫があったカスタムキーボードが、国内外からのアクセス殺到により数分で完売するということもあった。

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 これまではユーザーの少なさなどから、カスタムキーボードの価格は高止まりしていた。しかし規模が拡大した結果、金属削り出しケースを使うハイエンドな構成ながら3万円台のキットが登場するなど、カスタムキーボードの低価格化が進んでいる。また、製造コストは掛かるがより量産に向いている、射出成形技術を採用した低価格なカスタムキーボードキットも登場しつつある。

 日本でもハイエンドカスタムキーボードの設計に取り組む動きが出てきており、21年の大きな動きの一つになりそうだ。

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