フォルダブルディスプレイの搭載機種も増えてきてはいるが、部品や機構が高価で複雑なこともあり、現状ではプレミアムモデルでの採用にとどまっている。
今後、技術が成熟すればより低価格なスマホでの採用も増えていくと思われるが、当面はフォルダブルよりも「2画面」が現実的な選択肢となるだろう。縦画面を並べた2画面スマホは、中央に継ぎ目が生じるが、システム手帳のように広げてマルチタスクで使う場合の実用性はフォルダブルと変わらない。
マイクロソフトは19年末に「Surface Duo」と「Surface Neo」という2画面ディスプレイ搭載のデバイスを2機種発表している。このうちSurface Duoは20年9月に米国で発売された。
Surface DuoはWindowsではなく、Android搭載のスマートフォンだ。システム手帳のような形状で、2つのアプリを快適に利用できるスタイルとなっている。Surface Duoはまずは米国で発売され、21年初頭には英国、フランス、ドイツ、カナダの4カ国での発売が予告されている。日本での展開については現時点では言及されていない。
一方、Surface Neoは2画面向けに最適化された「Windows 10X」を搭載するデバイスだ。発表当初、20年内のホリデーシーズンに発売予定とされていたが、その実現はかなわなかった。20年10月にはマイクロソフトの公式サイトからSurface Neoの製品ページが削除されている。米テックニュース媒体Neowin宛に同社が寄せた声明によると、Surface Neoは開発自体が一時停止状態にあるという。
他方、LGは2画面スマホのユニークな使い方を提案している。19年以降、ケース脱着式の2画面スマホを継続して発表しており、20年夏にはNTTドコモとソフトバンクの5G対応の第1弾モデルとして「LG V60 ThinQ 5G」が採用された。冬には最新モデルの「LG VELVET」もNTTドコモから20年12月に発売された。
LGの2画面スマホは、単体では薄型スマホとして使えて、専用ケースを装着すれば2画面スマホになるという独特のスタイルだ。フォルダブルと比べると不格好ではあるものの、はるかに安く2画面を実現できる。LG VELVETの場合、専用ケース付きで8万8704円(ドコモオンラインショップ)となっている。ケースを外して単体で利用する場合は軽量で、防水性能も担保されているなど実用面でのメリットもある。
Android 10ではフォルダブルとともに2画面スマホへのOSレベルでの対応も進んでおり、大画面と携帯性を両立する選択肢の一つとして、2画面スマホは今後も登場していくだろう。
一方、9月に発表した「LG WING」は、回転式の2画面という珍しい構成のスマホだ。メインディスプレイの下にもサブディスプレイが隠れていて、メイン部分を回転させてT字型に展開できる。横向きにしたメイン画面で動画を表示しても持ちやすいという以外に、サブ画面でメモアプリなど別のアプリを起動できる。3Gケータイの円熟期にはT字型に展開できる機種も複数登場したが、その再現をスマホで試みたような格好だ。LG WINGの日本での発売予定は公表されていない。
2021年のフォルダブルディスプレイを巡る展開を予想してみよう。まず考えられるのは、フォルダブルスマホの低価格化だ。フォルダブルディスプレイの製造コストの低減に加え、5G対応のチップセットがエントリークラス向けまで出そろったため、低価格化の追い風となるだろう。
フォルダブルスマホでは新規参入の増加も予想される。有望なのは中国のOPPOやXiaomiの参入だ。2社はフォルダブルスマホで複数のコンセプトモデルを投入している。
米AppleがフォルダブルiPhoneの開発を進めているといううわさもある。仮にAppleがフォルダブルスマホを投入するとしたら、フォルダブルディスプレイの普及を強くけん引する存在になるだろう。
技術面の進化では、フォルダブルから「三つ折り」や「ローラブル」といったような構造の変化も予想される。三つ折りできるAndoridタブレットでは20年3月に中国TCLがコンセプトモデルを公開。また、中国OPPOは12月に日本のデザインスタジオ「nendo」とともに縦長の三つ折りスマホのコンセプトデザインを作成している。
後者の「ローラブル」は、ディスプレイを巻物のように引き出す構造だ。スマホではXiaomiやOPPO、TCLがコンセプトデザインを披露している。特にOPPOは量産製品に近いデザインを「OPPO X 2021」として公開しており、2021年に商用製品として投入される可能性は高いだろう。21年1月にオンライン開催で始まった「CES 2021」では、LGがコンセプトモデルのスマホ「LG Rollabe」も発表している。
「ローラブル」については、20年にテレビで商用製品も誕生している。LGが韓国で発売した「LG SIGNATURE OLED TV R」がそれだ。巻き取り可能な67インチディスプレイを備え、テレビ視聴時に電動でせり出して表示するという高いデザイン性が売りだ。19年初頭に発表され、20年10月にようやく発売にこぎつけた。ただ、販路が限定されており、価格も1億ウォン(約950万円)と高価なことから、同モデルが大きく普及することはなさそうだ。
ローラブルテレビについてはNHKもディスプレイメーカーと研究を進めている。19年には「Inter BEE 2019(国際放送機器展)」にてシャープと共同開発した試作機も披露されている。21年内に普及することはなさそうだが、スマホとテレビという2種類の画面で、引き出し型ディスプレイの最初の製品が登場するかもしれない。
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