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CES 2021プレスカンファレンス映像を「格付け」する(1/4 ページ)

» 2021年01月21日 16時46分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

 CES 2021が終わった。今回はオンライン開催だったわけだが、その数少ない良さは「出たいプレスカンファレンス、セッションにみんな出ても体の負担が小さい」ことだった。だが、身体的負担以外は良いことばかりではない。

 特に問題だったのは「プレスカンファレンスの映像がどれだけ見やすく、役立つか」という点だ。ここは各社、相当にレベルが違う。

 そこで今回は、筆者が参加した12のプレスカンファレンスについて、「プレカン映像の価値」の評価をしてみたい。注目するのは、発表内容ではなく「説明の仕方」だ。

 その価値を考えることは、これからの「企業プレゼンテーション」のあり方を考えることでもある。各社を比較すると、2020年に他社がやったことのトレンドを分析して努力した企業と、そうでない企業の差も見えてくる。

この記事について

この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年1月18日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから

今年のプレカンデーはどうだったのか

 CESは一般向け開催日の前日に「プレスカンファレンス・デー」があり、朝から1時間単位で時間が区切られ、ずっと各社のプレスカンファレンスが続く。夜の基調講演まで入れるとだいたい12時間くらい、ずっと続くわけだ。

 例年これが大変だ。

 カンファレンスはだいたい40分から45分。各セッションに数十人から数百人の記者が集まるので、会場に入るにも出るにも毎回行列で、撮影しやすいいい場所を取るにはダッシュする時もある。Samsungのように猛烈に人気があるカンファレンスは入るだけで1時間必要なので、前のカンファレンスは諦める必要が出てくる。複数のカンファレンスが同じ時間に重なり、出たくても出られないことだってある。

 それを、PCとカメラを抱えてずっと行うのだから、もはや戦場だ。

 しかし今年は違う。

 全部オンラインで、自室から移動する必要はないし、もちろん行列もない。リアルタイムで見られなければ、オンデマンド視聴もできる。資料もすぐに同じサイトからダウンロードできる。システムも回線も意外と堅牢で、輻輳(ふくそう)で止まるようなこともなかった。インフラ構築はMicrosoftだそうなのだが、この辺はさすが。CEATECとは違う。

 というわけで、プレスカンファレンスについては、「結局深夜に起きて取材していた」ことを除けば、身体的にはとても快適で、CES取材とは思えないほどだった。

 一方、冒頭で述べたように、「各社のプレゼン映像」の完成度や分かりやすさには、かなりの差があった。考え方の違いも面白かった。

 そこで、筆者なりに評価をしてみたいと思う。レギュレーションはたった一つ。「発表内容ではなく映像の質と分かりやすさで評価する」こと。対象とするのはプレスカンファレンスだけで、基調講演やオンライン上での追加コンテンツは基本的に含まない。対象は11社。プレスカンファレンスだけでいえばさらに8社ほどあるようなのだが、時間の関係でとりあえず筆者がちゃんと見た11社だけで勘弁していただく。

 では、開催時間が早かった順に星(最高5つ星)と概要で示していきたい。なお、YouTubeなどにカンファレンスのビデオが一般公開されている場合、そのリンクも付記しておく。CES 2021登録者は自由にビデオが見れるが、それ以外は見られないためだ。気になる方はチェックしていただきたい。

Hisense

 テレビなどの家電で知られる中国系メーカーのHisense。アメリカ市場向けにはやはり中心はテレビなどだ。

 短いイメージビデオが流れた後は、ステージを映す形でのプレゼンが続く。従来のプレスカンファレンスをそのまま映像化したようなイメージだ。工夫は特にないが、特に問題もなく見ていられる。

photo ステージイベント形式で進行
photo 商品情報などはプレゼン資料が映像として提示された

 最後に、意図が見えにくいイメージ映像が数分間流れたのだが、あれ、本当に必要だったのだろうか……。

photo 微妙に狙いが分からないイメージ映像

評価:☆☆☆

LG Electronics

プレスカンファレンス動画

 韓国のLG Electronicsも家電メーカーなので、テレビからスマートフォン、冷蔵庫までをフルラインアップで紹介する形だった。ただしこちらはステージ形式でなく、作り込んだビデオだ。製品ごとに説明者も映像のテイストも変わり、見ていて飽きにくい。

photo ビデオでのプレゼンはかなり作り込まれている
photo 製品ごとにプレゼン映像がしっかり作られているのもポイント

 製品中心であっても、要所要所で「数字」が示されていたのが好感触。こうした部分は記事などで使いやすい。

photo プレゼン内で示されていた、コロナ禍以降のテレビ視聴時間の変化

 最後に、チラ見せのように説明抜きで「ローラブルスマートフォン」の姿が出てきたのもにくい。製品発表までの期待感をうまく演出するやり方だ。

photo ローラブルディスプレイのスマートフォンをチラ見せ

評価:☆☆☆☆

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