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「こんなの俺らのAppleじゃない!」 M1 MacショックとWindowsの行方 小寺・西田の2021年新春対談(前編)(2/2 ページ)

» 2021年01月29日 07時35分 公開
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PCに未来はある?

小寺 僕ね、このあいだレビューで、ThinkPad X1 Foldを借りたんですよ。曲がるやつ。真ん中で曲がって、ペンでも書ける、という。

西田 うんうん。

小寺 開発者インタビューとかして記事化してるところなんですけど(1月20日、MONOistで掲載)。PCの未来ってなんでしょうね、みたいな話を開発者の方とさせてもらって。

 その中で、彼らが考えてるのは「持ち歩く時は小さくて、使う時は大きい」という、やっぱりそこが一番だと。で、今のクラムシェル型は、折り畳むんで半分なんだけど、開いても画面の面積は全体の半分じゃないですか。それはやっぱり小さいと。例えば13インチを持ち歩くんだったら、折り畳んでも13インチなわけじゃないですか。画面サイズは。

西田 まあそうですね。

小寺 でも、13インチを折り畳んで半分のサイズになったらそれは小さいよね、という。今、PCを持ち歩くのか? という問題があって、今は持ち歩かなくなったけど、この「サイズが半分になる」というメリットってどうなるんですかね? みたいな話をした時に、そうは言っても家庭内でも別に構わなくて、いつでもスマートフォン、タブレットクラスのサイズ感で持てる、どこでも広げられる、というところが大事で、プラスしてPCのパワーがある、というところがあれのメリットだ、っておっしゃってたんですよね。

西田 うん。

小寺 それを考えていくと、macOSって、iPhoneのアプリとかが動くようになってるじゃないですか。僕は究極的には、iPadOSと一緒になるんだろうなと思ってるんですよ。iPadアプリが動いたら、けっこう、もっと画面を大きく使えるというか、もっといろんなことに使えるんじゃないかなと。

西田 うん。

小寺 僕、行政書士の勉強をしてた時期があって、あの時にiPad使ってたんですけど、今日本語の文字を書いたときの識字率って、ものすごく良くなってるんですよ。

西田 ものすごく上がってますね。

小寺 ほとんど間違わないですよね。ちゃんとした文字に変換する。で、X1 Foldの話をしてた時に、L字型になるモードがあって。これまでPCでのペン対応って、斜めに立ってるディスプレイに対して書くのは、書きづらい。下にペタッとなってるべきなんです。

 そうなると会議しながらメモを取る時にどうするんだ?というので、だからL字になって、上半分で会議、下半分で手書きというのは最高なんだ、みたいな話をしていただいたんですけど。

photo L字の状態でもそのまま使えるThinkPad X1 Fold

 確かにそういう2画面構成はありだなと。そこで、西田さんに聞きたいんだけど。

西田 うん。

小寺 Windows 10Xって2画面対応OSという触れ込みだったんだけど、現状のWindows 10でもそういうことできちゃったわけで。そうなるとあれのメリットって何?

西田 もともと順番通りにいくと、あれはWindowsを一から作り直したものなんですよ、別の言い方をすると。

小寺 ああ、元はそんなにデカい話だったんですか。

西田 あれはWindows Coreという俗称のもので動いてて、今までのWindowsとは違うコア技術で――簡単に言うと、HoloLensの中身なんですよ、あれ。上にきちんとしたWindowsのシェルを載せればWindowsとして動くよね、というのがWindows 10Xなんです、簡単に言うと。

小寺 なるほど。

西田 もともとはそこで、Win32 APIの普通のWindowsアプリも動かす、という話だったんですよ。「だった」というところでお分かりのように、これ、動かなくなってですね、大幅に計画が後退しちゃったんです。そうするとどうなるかというと、UWP(Universal Windows Platform)と呼ばれているMicrosoft Storeで配る特別なアプリしか動かない、という話になっちゃったんですね。

小寺 ああー。それはいつか来た道(Windows RT)ですね。

西田 いつか来た道なんですよ。もともとのそのへんの計画が全部うまくいってれば、2020年中にWindows 10X載せた2画面Surfaceデビューって話だったんですよ。ところが、この計画がご破算になったので――ThinkPad X1 Foldもそうなんですけど、あれを使えなくなったわけですよ。

小寺 (苦笑)。

西田 そうすると、「あれっ、OSの方向性がおかしくなってきたぞ」となったので、一回チャラにして、今は1画面でも使える、Windows 10Xという別のOS、Win32アプリが動かない別のOSを作ってる。

小寺 あー(苦笑)。紆余曲折あって元に戻ってきてんのね。

西田 めっちゃ紆余曲折あって、元に戻ってきたんですよ。なので、そうすると「いや、それ昔Windows RTって言ってたやつと同じじゃん?」みたいな話になってきて。なので、商品の話がどこからも出なくなったんですよ。

 もともとは2020年中にLenovoも出す、Acerも出す、御大Microsoftも、って話だったんだけど、2019年末ぐらいに「オイオイちょっと待て、これはヤバいぞ」という話になって、2020年1月ぐらいに本気でヤバいぞ、となって、一気にガーッと計画が引いちゃったので、2020年の間には誰もその話をしなくなっちゃったわけです。

小寺 (苦笑)。

西田 だからニュースも全然出てこなかったでしょ。この話は、うわさベースとか、開発の中身をある程度耳にしてる僕とか鈴木淳也さんとかしか知らないわけですよ。本当はFoldも、2020年のCESのあたりでは10Xを使って、という話だったはずなんですよ。

小寺 うん、そうなのよ。

西田 ところがそうじゃなくなったので、ちょっとパフォーマンスが悪くなっちゃったんですよね。Windowsとしてはなんでもできるけど。それはいろんなメーカーにけっこう影響を与えてる。

 逆に言うと、ここでM1が出たこともあって、「じゃ、Armでいいんじゃねえの?」という話にはなりつつある。きちんとクアルコムが頑張ってパフォーマンスの良いPC用のSnapdragonを出してくれれば、Windows on ARMでもうちょっとパフォーマンスがいいFoldableだったり、モバイルだったりのWindowsが出てくる可能性はあるとは思ってる。ただそれが2021年に間に合うか、というとちょっと危ないかな、と思ってます。

小寺 ああ、今年はないかもってことですか。

西田 結局18カ月かかるから。M1ショックが去年の6月だとして、見直し始めたとしても、ギリ間に合って2021年の末なんですよね。

小寺 うん。まあでもPCの方向性的にはArmに向かう、というのは流れとしてはありそうですよね。

西田 ある。あとはArmもそうなんだけど、AMDのモバイルチップがだんだん良くなってて、次に出てくるやつがさらに消費電力が下がるから、意外とそれもおいしいかも。というのは、AMDは安いんですよ。生産量がそこそこしっかりあって安いので、今普通の人が買うノートPCでもきちんとAMDだったりするんですよね。

 なので、もしかするとモバイルノートではArmじゃなくてAMDのRyzenが載ってる、というのが出てくる可能性はあると思う。半導体の製造技術はAMDのほうがプロセスが進んでるので、けっこうそこは面白いことになるかな、と思いますけど。

 ただ、AMDは消費電力が低いプロセッサは苦手なんですよね。

小寺 そうなんだ。

西田 あくまで僕の評価では、ですけど。だから、Arm版のほうが面白いとは思います。

後編に続く

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