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ファン内蔵テック系マスクの真価は? Philips「ブリーズマスク」を2週間使ってみた(2/2 ページ)

» 2021年02月12日 09時20分 公開
[西田宗千佳ITmedia]
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独立した「ファンモジュール」で空気を入れ替え

 もちろん、一番の違いは「ファン」の有無。ファンモジュールは取り外し式になっていて、軽いプラスチックの爪とマグネットで外側のマスクに留めるような構造になっている。そのファン部分にマスクフィルターの円筒状の部分をはめ込み、利用する。

photo ファンモジュール。銀色の方にファンが入っていて、反対側がバッテリーだ

 ファンの操作は外側にあるボタン1つで行う。ボタンを押すたびにモードが変わり、「弱」「中」「強」「オフ」を繰り返すような感じである。

 もちろん内蔵バッテリーで動作する。ファンの反対、右側のブロックがバッテリーになっている。

 ファンブロックは完全に外してしまえるのだが、外さなくても充電はできる。マスクフィルターと外側のマスクの間にケーブルを差し込めばいい。

 電源の入力はmicro USB。一般的な5V出力であれば問題ないようだ。ACアダプターは付属しないが、どこのご家庭にもあるUSB充電器でいいし、PCでもモバイルバッテリーでもいい。ケーブルをつないだまま使うこともできるが、まあ、それは緊急時だけでいいだろう。

photo ファンモジュールを内側から。右側のバッテリー部の下から、micro USBで充電する

 満充電まではカタログ上3時間、それで2〜3.5時間動作することになっている。これは、筆者の体感ともそうズレていない。動作可能時間はもうちょっと長いような気がするのだが、それは実際の運用時には「割と小まめに止めながら使う」からだろう、と思っている。

使い勝手は良好だが問題は「コストへの納得感」

 では、肝心の使い勝手に入ろう。

 電源をオンにすると、耳には小さなファンのノイズが聞こえ始める。「弱」だとかなり小さな音で、周囲にもまず聞こえない。自分でもそう気にならないだろう。「中」「強」だとそれなりの音量になる。周囲からは「強だとちょっと聞こえる」と言われたが、まあ、自分が思うほど気にならない音ではある。

 ただ、自分の耳には「中」以上だとそれなりの大きさだと感じられる。イメージとしては「ダース・ベイダー」。コーホー、というかシュゴーというか、思わず「I am your father」と言いたくなる感じではある。

 一方で、ファンが動いていると確かに快適だ。口の周りがかなり涼しく、熱が籠った感じがしない。メガネが曇ることもない。ファンが強いほど息は楽になるが、運動するとか階段を何階分も一気に上がる、とかでない限り、「強」にする必然性はないように思えた。日常的には「弱」で十分だ。

 ちょっと気になるのは、「ファンで換気している」という点だろう。特に、自分の呼気が出ていくことについて、コロナ禍ではどうなのか……という気がしてくる。事実フィリップスも、「三密になる環境ではファンは動かさないで」としている。

 とはいうものの、実際に使ってみると、文章などから受けていたイメージとは違うものなのだな……ということも分かってくる。その結果として「呼気の問題はそこまで大きくなかろう」という気にもなってくるのだ。

 というのはこの製品、実際には「自分の息をファンで吐き出す」というより、「ファンで新鮮な空気を取り込む」効果の方が高いのだ。ファンに手を当ててみても、空気が出ていく時は「息を吐き出した時の勢い」が強く、ファンの効果はあまり強くない。一方で空気を吸い込む様子は、手を触れるとよく分かるくらいに強い。

 この製品はファンだけで空気を回しているわけではない。普通のマスクと全く同じように、マスク全体で空気の出し入れが行われる。だから前述のように、電源がオフの時でも苦しくはない。しかしそこでファンを使って「空気を積極的に入れる」ことで顔の周りの快適さを保ち、より外に空気を出しやすくしている、といった方がいいだろう。

 その特性上、感染症対策を考えた場合、人が近い・多数いる場所ではやはり、ファンはオフにした方がいい。だが、ソーシャルディスタンスが取れている場所では、ファンをオンにしてより呼吸を楽にできる。「ソーシャルディスタンスが取れているならマスクは外しても」という考え方もあるだろうが、いちいちマスクをつけ外しするのはどうかと思うし、そもそも判断に困る部分もある。常にマスクをつける「ノーマリーマスク」な状況で、さらに人が少ないシーンではワンプッシュで呼吸を楽にする、というのが、このマスクの適切な使い方であるように思う。

 課題はもちろんある。

 めんどくさくてコストがかかることだ。

 3時間動けば、今のステイホームな状況だと「1日の用件に十分」という印象だが、それでも毎日充電する必要はある。

 マスクフィルターはそこまで頻繁に交換する必要はなさそうだが、やっぱり週に1度は入れ替えた方が良い。最低数枚は用意し、軽い水洗いなどをしながら交換して使うのが良さそうな感じだ。

 そもそも、ブリーズマスクとフィルターは高い。マスクがだいたい1万円、フィルターが5枚組で1500円程度だった。1枚数十円もかからないマスクに、それだけのコストをかける必然性は高いのか……というと、正直自己満足に近い世界かと思う。正直、「これ、買ったんスよ」と、知り合いに会った時に話すネタができたことが、一番の価値だったように思う。

 とはいえ、このあと気候が良くなり、より暖かくなると、「口元が暑くないマスク」としての効果は高くなってくるだろう。そうすると、この価格でこの快適さ、という部分への満足度は高まりそうだ。だから、本当の評価はまた夏にすることにしたい。また、ジョギングなどを日常的に行っている人や、花粉症対策なども必要な人の場合、満足度はさらにプラスされるだろう。

 個人的にはこの価格なら、バッテリー動作時間や呼気の情報などをBluetoothなどでスマホに飛ばしてくれる機能があるとうれしいのに……と思う。それがあるなら、1万8000円くらいになっても納得できるし、より自慢しがいがあるのだけれど。

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