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「自動運転レベル3」対応レジェンド 検証走行は130万km、世界初となる実用化の舞台裏(2/2 ページ)

» 2021年03月04日 19時14分 公開
[樋口隆充ITmedia]
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立ちはだかるレベル3の壁、130万kmに及ぶ試験走行で想定外をなくす日々

 これまで他社が発表した技術は運転支援レベルで、国交省の基準ではレベル2に当たる。レベル3の実現はかなりの難易度だったという。

 杉本さんは「レベル2と3を比較すると、開発側からするとてっぺんが見えないくらい高い壁だった。レベル3からは操縦の主体がシステムになるので非常に(責任が)重いものだった」と振り返る。

photo レベル3の壁が立ちはだかった

 レベル3実現のため、杉本さんや青木さんら開発チームはホンダは社内のドライビングシミュレーターで検証を重ねた。その数はなんと1000万通り。さらに、実際の公道での検証も行った。その距離は130万kmにも及ぶ。「データを解析してまたシミュレーションに落とし込むなど、仮説と検証を繰り返した」と青木さん。

 ここまで検証を重ねる理由について杉本さんは「想定外を洗い出すため」と説明する。「自分が運転する車や周囲の車の振る舞い、道路の形状などを検証した。そうしたものを考えるとあっという間に膨大な数になる」という。

 こうした検証を重ねて開発されたシステムは「Honda SENSING Elite」と名付けられた。

 開発中のメンバーの心の支えになったのが、F1参戦や航空機開発などで業界をけん引してきたという自負だ。

 杉本さんは「ホンダは1980年代から自動運転技術の開発に着手していたものの、数年前まではホンダは遅れているといわれていた。ウサギとカメじゃないが、着実にやってきたという自負があった。結果的に世界初となりうれしく思う」と振り返る。ロボットや航空機開発で培った信頼性の高い技術の一部も自動運転システムの開発に生かしているという。

photo 杉本さん

 レベル5となる完全自動運転化への第一歩を踏み出したホンダ。新型レジェンドの開発を終えた今、担当者の2人は何を思うか。

 9年前に他界した父親が歴代の全レジェンドを所有し、自身も父親から譲り受けたレジェンドに乗っていたという青木さんは「本当によくここまで来たという印象。開発チーム内で意見がぶつかり、精神的にも苦労があったが、自動運転技術で世の中の人に喜んでもらいたい」と話す。

photo 青木さん

 杉本さんは「自動運転は初めてのシステムなので、今後、ドライバーが心から信頼してこれなら使えるというところまで高めないといけない。自動運転は夢だが、第一に考えているのは安全で、今の交通事故はほとんどがヒューマンエラーだ」と指摘する。「事故ゼロ社会の実現に向けて、進む技術をもう一歩進める大きな価値があると考えているし、それを実現することで自由な移動の喜びを提供できる」(同)と今後の開発へ意欲を見せた。

レジェンド発表会
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